【3月31日 AFP】米国と中国の研究チームは30日、新型コロナウイルスの新規感染患者のうち、どの患者が重度肺疾患の発症へと進行するかを正確に予測できる人工知能(AI)ツールを開発したと発表した。

 専門誌「Computers, Materials & Continua」に掲載された論文の共同執筆者で、米ニューヨーク大学(New York University)グロスマン医学部(Grossman School of Medicine)のミーガン・コフィー(Megan Coffee)医師によると、このアルゴリズムを導入することで、資源がぎりぎりの状態にある医療システムにおいて優先して対応すべき対象を判断する助けになるという。

 このAIツールは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症合併症の一つである急性呼吸窮迫症候群(ARDS)発症の予測因子となる驚くべき指標を複数発見した。ARDSは肺に液体成分がたまる疾患で、新型コロナウイルス患者がこれを発症すると約50%の死亡リスクとなる。

 研究チームは、中国東部・浙江(Zhejiang)省温州(Wenzhou)にある二つの病院の新型コロナウイルス患者53人から収集したデータに機械学習アルゴリズムを適用した。その結果、肝臓酵素の血中アラニンアミノ基転移酵素(ALT)の濃度、体の痛みの訴え、血中ヘモグロビン濃度という3点の特徴の変化が、その後の重症疾患の最も正確な予測因子となることを発見した。

 この情報とその他の因子を組み合わせて用いることで、AIツールはARDSの発症リスクを最大80%の精度で予測することができた。

 対照的に、「すりガラス陰影」と呼ばれる肺画像の特定のパターンや発熱、強い免疫反応などのCOVID-19に特有と考えられている特徴については、初期の軽度な症状では、どの患者がARDSを発症するかの予測には役に立たなかった。年齢や性別も有用な予測因子ではなかったが、別の研究では60歳以上の男性は他よりもリスクが高いことが明らかになっている。

 コフィー氏は、AFPの取材に「コンピューターが判断のために取り上げるデータ項目の多くは、臨床医が通常注目する項目とは異なっているため、非常に興味深い」と語った。