■効果の実証には数千人の臨床試験が必要

 ただし、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長は、有望だからといって効果が実証されているわけではなく、これまでに実施された小規模な研究は裏付けに乏しいと語る。

 3月に発表された中国の患者30人を対象とした試験では、ヒドロキシクロロキンを使用しても標準的な治療以上の効果は得られなかったとの結果も出ている。

 確かな証拠を得る唯一の方法は、無作為(ランダム)化臨床試験だと研究者らはいう。薬品開発では究極の判断基準だが、結果が出るまでに数か月あるいは数年かかる上、多くの場合、世界中の患者数千人で確かめなくてはならない。

 国によっては慎重なアプローチを取っているところもある。例えばスペインは先月30日、「別途通知があるまで」は、クロロキンの投与はリウマチ性関節炎および狼瘡の患者が優先されると発表した。

 一方、フランスのオリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は、COVID-19の最重症患者にのみクロロキンとヒドロキシクロロキンの使用を可能とすると述べた。

 もう一つの問題は、独自判断で病気を治そうとする患者が出ることだ。米アリゾナ州では今週、水生寄生生物を駆除する際に使用されるクロロキンの一種を服用した男性が死亡する例が発生している。

 それでもすでにいくつかの国が臨床試験を開始している。米国でも今週ニューヨークで試験が始まった。

 中国で実施された大規模な臨床試験の結果を待ちつつ、イタリアでは2000人を対象とした試験が行われている。他に手立てがない場合の例外的使用が広まる中、安全に関する警戒を怠らないことが重要だ。

 米大手総合病院メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の遺伝性心臓疾患専門医マイケル・アッカーマン(Michael Ackerman)氏は、自覚症状のない不整脈がある場合、服用した人の約1%に心不全による失神や発作、場合によって突然死が起きる可能性があるという。(c)AFP/Issam AHMED