【3月29日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)拡大を受け、インドでは「英雄」として称賛されていた医師や看護師、宅配ドライバーなど、最前線で働く人々が攻撃の標的になっている。中には、パニックに陥った住民たちから家を追い出される事例まで発生している。

 同国では一部の通信販売大手が、従業員に対する迷惑行為を理由の一つとして宅配サービスを一時中止する事態になった一方、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)同国首相は、病院職員に対する嫌がらせが「大問題」と化したと指摘した。

 インド各地から寄せられた攻撃や嫌がらせの報告は、21日間にわたる同国全土での封鎖措置が今週課されたことに伴い増加。少なくともうち一件では、医薬品を運ぶ宅配ドライバーを警察が殴打したと非難されている。

 同国西部の都市スラト(Surat)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療に当たる病院で働く医師のサンジバニ・パニグラヒ(Sanjibani Panigrahi)さん(36)はAFPに対して、病院での長い一日を終えてから帰宅した際の出来事について説明。

 パニグラヒさんは、自宅のあるアパートの入り口前で近隣住民たちから行く手を阻まれ、仕事を続ければ「相応の結果」が伴うと脅迫されたという。

 さらに、「(過去に)私が楽しく交流していた人と同じ人たちだ。彼らが問題に直面したときはいつでも、私は助けていた」と述べ、「人々の間に恐怖心が漂っていることは、よく分かっている。でも、まるで突然私が触れてはならない人になったかのようだ」と語った。

 全インド医科学研究所(AIIMS)の医師らは今週、パニックに陥った家主や住宅供給者から医療従事者が自宅を強制的に追い出されたことを受け、政府に対して支援を嘆願。文書には「多くの医師たちは国内各地で、行くあてもなく、すべての家財を持って路上で立ち尽くしている」と指摘した。

 モディ首相は、すべての国民に対し医療従事者をのけ者として扱うのをやめるよう求め、ウイルスと闘っている人々は「神のような」存在だと評し、「彼らは今日、自分たちの命を危険にさらしながらも私たちを死から救ってくれる人々だ」と述べた。