【3月30日 AFP】スペインを中心に各国のクラブを渡り歩いているサッカー選手のトニ・ドバーレ(Antonio Rodriguez Dovale)は、今はいったんスパイクを脱ぎ、薬剤師の白衣をまとって母国で新型コロナウイルスとの闘いの最前線にいる。

 29歳のドバーレは、スペイン1部リーグのクラブにも所属したことのある元トップ選手で、最近まではタイのチームでプレーしていたが、家族の元へ帰郷していたときに新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起こった。

 そこでドバーレは、サッカー選手の夢を追ったため仕事にすることはなかったものの、以前学んだ薬学の知識を生かし、「微力ながら」ウイルスとの闘いに力を貸すことを決めた。

 ドバーレはAFPに対して「荷物をまとめてタイへ戻りかけていたところで、複雑な状況になった」と話し、渡航制限が課されたため、大西洋に面した故郷の港町ラコルーニャ(La Coruna)を出られなくなった事情を明かした。

 4年前に大学で薬学を学びはしたものの、実際にその分野で働いたことはなかった。それでも、スポーツ界の活動が止まっている今こそ、学校で得た知識を母国のために使うべき時だと思った。

「僕はアジアでプレーしていたけど、向こうとこちらとでは薬局のスタイルも違うし、スペインでずっと働くというのも難しかった」「そこでサッカーがストップし、渡航が禁止されている今、『現場の経験を積んで少しでもできることをしよう』と思い立った」

 新型ウイルスはスペインでも猛威を振るい、感染者数と死者数は増え続けているが、1万人前後の回復が報告されているという希望もある。

 今は家族の営む薬局で働くドバーレは「本当に恐ろしい状況だ。僕らのようなたくさんの人と触れ合う仕事をしている人は怖がっているし、僕らのところへアドバイスを求めに来る人も怖がっている」と話す。手袋はしているがマスクは着けておらず、少なくとも今は笑顔を絶やさないことを心がけているように見える。

「感染のリスクにさらされているのはみんな分かっているし、これはパンデミックで、複雑な状況だ」「だけどこういう難しい状況でどう振る舞うかで、その人の人間性が決まってくるということも、みんな分かっている。だから僕としては、自分の身の安全に対する不安は脇に置いて、できる限りみんなの助けにならないといけない」

 ドバーレは、故郷の町の近くにあるクラブ、セルタ(Celta de Vigo)でキャリアをスタートさせると、1部リーグのCDレガネス(CD Leganes)やラージョ・バジェカノ(Rayo Vallecano)、米メジャーリーグサッカー(MLS)のスポルティング・カンザスシティ(Sporting Kansas City)、インディアン・スーパーリーグのベンガルールFC(Bengaluru FC)などを経て、現在はタイのサイアム・ネイビー(Navy FC)に所属している。

「今はみんなと同じで、室内で家具を跳び越したりして練習している」ドバーレはそう冗談めかし、「朝の7時から始めて、水のボトルとか、使える物はなんでも使う。それから下の薬局に行く」と続ける。

「できる限り早く終息して、またサッカーがプレーできるようになってほしい」「どうすればそこまで持って行けるかは見当もつかないけど、なるべく早く終わって、またサッカーをプレーする普段の生活に戻れると思いたい」 (c)AFP/Gabriel RUBIO GIRON