【4月2日 AFP】ボート女子の英国代表として五輪出場経験のある31歳のポリー・スワン(Polly Swann)は、ほんの数日前まで東京五輪を見据えていた。しかし、現在は新型コロナウイルスとの闘いを手助けするために、予定より早く医者としてキャリアを開始することを検討している。

 2016年リオデジャネイロ五輪の女子エイトで銀メダルを獲得したスワンは、医療施設で新たな人生を始める前に、日本でもう一つ上のメダルを目指していた。先日、東京五輪の延期が決まった際には、数週間続いた不明瞭な状況が少なくとも明確になったと話した。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)で医学を学んだスワンは、日本で競技を終えてから医者としての研修を開始する予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中で、スコットランドの保健機関が数週間のうちにスタッフを補充する可能性があるという話を耳にした。

 東京五輪では女子かじなしフォアで優勝も狙えるポジションにいたスワンは、「難しい選択を迫られると思う」とすると、「五輪は自分の夢であり、とても個人的なこと。出場して金メダルを取りたいけれど、世界中が直面している困難な状況は、スポーツよりもはるかに大きなこと」と語った。

「医学に強い情熱があるから、英国民保健サービス(NHS)の歯車として従事することには、かなりの熱意を感じている」

 欧州ボート選手権(European Rowing Championships)を制した実績を持つスワンは、東京五輪の延期に悔しさをにじませながらも、選手が調子をピークに持っていく時間が増えたとも話した。また、NHSは五輪を目指している医師に協力的であることから、夢をまだ諦めていないと明かしたが、「これから難しくなる。自分には完璧なプランがあったのに」と認めた。
 
 一方、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の医学生で女子軽量級ダブルスカルのイモージェン・グラント(Imogen Grant)も、計画に折り合いをつけなければならない状況になっているが、今のところ来年の東京五輪にしっかりと照準を定めている。

 東京五輪を終えた後、2年間の休学を経て医学の勉強を再スタートさせる予定だったグラントは、延期が決まっても五輪への熱意が薄れることはなかったという。「数時間くらいはやり切れなくなったけれど、最終的に自分が英代表チームに入りたかった理由は、五輪に出場してメダルを取ることだった」「その夢は変わっていない」

 グラントは混乱の中でも前向きな姿勢を維持しており、「この前のトレーニング合宿が終わった後、コーチが『かなり良い調子だけれど、もう一年あればいいのに』と話していたら、突然そういう状況になった」とし、「この機会を最大限に生かしたい」と語った。(c)AFP/John WEAVER