【3月27日 AFP】北欧のフィンランドでは数十年にわたり、平等主義社会の基盤の一つとして学校給食が無料で提供されている。新型コロナウイルス対策として児童・生徒の大多数が在宅学習を行っている現在も、学校は無料給食の提供を継続しており、昼休みになると子どもたちが給食を食べに登校する。

 首都ヘルシンキでは約200人の児童が自宅での学習を一時中断し、登校して出来たての給食を食べる。新型ウイルスへの感染リスクを低減するため他人との「社会的距離」を保つ政府の方針は、給食の時間にも適用されている。

「子どもたちは互いに1メートル以上の間隔を保ち、教師の監督の下で手を洗っている。同時に給食を食べるのは10人までだ」と、市教育委員会の担当者はAFPに説明した。

 国内の学校では、10歳以上の児童・生徒の学級は全て閉鎖されているが、10歳未満の児童の学級は閉鎖しないことが法律で定められており、在宅学習の要請にとどまっている。

 政府の非常事態宣言を受け、無料給食の提供を続行するか否かは各自治体の判断にゆだねられている。公式データはないものの、自治体連合によれば給食提供をやめた地域はないという。

「学校給食は子どもの命にかかわるセーフティーネットの一部だ」と、児童支援団体「MLL」で貧困問題を担当するリーサ・パルティオ(Liisa Partio)さんは指摘。「週末に自宅の冷蔵庫が空っぽでも、月曜日にはごはんが食べられる。子どもたちはそれを知っている」と述べた。

 フィンランドは1948年に全児童・生徒を対象に無料の給食提供を始めた。それまで世界では前例がなかったと考えられている。(c)AFP