【3月27日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった妊娠中の母親から子にウイルスが感染する「母子感染」は、まれだが起こり得るとの研究報告が26日、中国の科学者チームによって発表された。

 今回の研究では、パンデミック(世界的な大流行)を引き起こしているCOVID-19が最初に確認された中国・武漢(Wuhan)に住む妊娠中の母親33人を追跡調査した。その結果、出生時の新生児3人に新型コロナウイルスへの感染が確認された。サンプルの規模は非常に小さいが、感染発生率は約9%となる。

 研究チームは、米国医師会(AMA)発行の医学誌「JAMA小児科学(JAMA Pediatrics)」に発表した論文に「分娩(ぶんべん)時には厳重な感染対策と予防措置が講じられていたため、新生児の上気道や肛門にみられたSARS-CoV-2は母親に由来する可能性が高い」と記している。

 SARS-CoV-2は新型コロナウイルスの正式名称だ。

 感染した新生児3人はみな男児で、母親がCOVID-19に関連する肺炎を発症していたため出産は帝王切開で行われた。さらに3人のうち1人は胎児仮死のため妊娠31週の早産となり、生後の蘇生が必要となった。

 正期産で誕生した新生児2人は嗜眠(しみん)と発熱の症状があり、うち1人は肺炎を発症した。2人は集中治療室(ICU)で処置を受け、生後6日目に実施した新型コロナウイルス検査では陰性だった。

 早産で生まれた新生児は肺炎、呼吸困難、敗血症を発症するなど、病状が最も深刻だった。これらの症状は人工呼吸、抗生物質、カフェインなどを用いた集中治療で最終的にすべて解消し、新生児は生後7日目の新型コロナウイルス検査で陰性となった。

 新生児は3人とも一命を取り留めたという。

 中国の専門家らは過去の研究報告で、生後30時間の新生児から新型コロナウイルスが検出されたことを受け、妊娠中の母から子へのいわゆる「垂直感染」が起きた可能性があるとの見解を示していた。

 垂直感染は、胎盤経由か分娩の過程で起こる可能性がある。

「そのため、妊娠した女性に対するスクリーニング検査とともに、厳重な感染予防措置、感染した母親の隔離、(新生児の)綿密な経過観察などを実施することが極めて重要になる」と、研究チームは結論付けている。(c)AFP