【3月26日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)抑制に成功するための処方箋として世界保健機関(WHO)が呼び掛けているのは、「一にも二にも、とにかく検査」だ。単純なことのようにみえるが、実際に従うことができる国が多くはないのはなぜだろうか?

 ウイルス感染拡大を抑えるために大規模な検査を実施し、称賛を受けている韓国などの国がある一方で、多くの国々はこの方法に追随できずにいると専門家らは指摘している。

 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は23日、「一部の国は、こうした攻めの手を使う能力がなく悪戦苦闘している」と認めた。

 だが同氏のメッセージは一貫している。「勝利のためには、われわれは積極果敢かつ狙いを定めた戦術でウイルスと闘わなければならない。疑わしいケースはすべて検査し、感染が確認された人は全員隔離の上で治療し、濃厚接触者もすべて突き止めて検疫するということだ」

 従来のリアルタイムPCR検査は、呼吸器系ウイルスの検出を目的としたものだ。だが、検査レベルは国によってばらつきがある。スイス・ジュネーブ大学(University of Geneva)の公衆衛生・伝染病学専門家、アントワーヌ・フラオー(Antoine Flahault)教授は「それはすべて国の発展水準に左右される」とAFPの取材に語った。

 韓国は約30万件に及ぶ大規模な検査を実施した。感染者を隔離し、それと組み合わせて野心的な追跡プログラムを展開。ビデオ監視や銀行のカード利用、スマートフォンのデータ収集などで感染者が接触した人々を突き止めた。こうした努力が実り、1日当たりの新規感染者は100人未満に減った。このような積極的な検査戦略はシンガポールでも奏功している。

■血清検査

 欧州諸国の検査は韓国ほどの規模ではなく、重症で入院した患者に集中している。これについてフラオー氏は、検査をする意志がないのではなく、必要なリソースが不足しているのが問題だという。

 韓国やシンガポールがそうした困難に直面していないのはなぜか。フランスのウイルス学者アン・ゴファール(Anne Goffard)氏は、両国は過去の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の流行で学んだ教訓を生かしていると説明する。

 欧州諸国の中では1週間に16万件の検査をする能力があるドイツが、他国と比較して「自律的」かもしれないとフラオー氏はいう。

 初動で大がかりな検査を行わなかったフランスでは現在、ウイルスの感染拡大を阻止するために厳格な外出禁止措置を講じているが、その終了時に大規模な検査を実施する計画を立てている。これには血清学的スクリーニングと呼ばれる新たな検査を導入する可能性がある。

 これは血液サンプルを用いて特定のウイルスやバクテリアに関連する抗体の存在を検査するもので、個人の免疫システムがウイルスに反応し、免疫がついたかどうかを調べる。

 世界各地で複数のチームが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスの血清検査を開発中だ。フランスのオリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は、数週間内にこの検査が実施可能となることを期待していると語った。(c)AFP/Paul RICARD