【3月26日 AFP】英国の総人口の過半数がすでに新型コロナウイルスに感染している恐れがあるとの衝撃的な見出しが先ごろメディアをにぎわせたが、元となった論文を執筆した英オックスフォード大学(University of Oxford)のチームが25日、研究結果について、パンデミック(世界的な大流行)を封じ込めるためには広範な抗体検査が必要だと示すものだと語った。

 研究チームは、英国内で確認された感染者数と死者数に基づき、数理モデルを用いて推定感染率を調査した。仮定に基づいた複数の感染率を使って試算すると、英国とイタリアで新型ウイルスに感染しているが深刻な症状がないため検査対象とならない人の数には、大きなばらつきがみられた。

 これらの試算によって提示された可能性の一つが、今月19日の時点で英国の総人口の68%はすでに感染しているというものだった。まだ査読を受けていない段階のこの研究がメディアに取り上げられ、英人口の過半数が感染しているかもしれないと示唆する見出しとなった。

 この研究について、参加したオックスフォード大のポール・クレナーマン(Paul Klenerman)氏(免疫学・感染症研究)は、仮定に基づいて導き出される感染率にはばらつきがあることを明らかにし、大規模な血清検査の必要性を強調するのが目的だったとAFPに説明した。

 血清検査では、対象者の血中の抗体を検査し、特定のウイルスに感染し免疫を獲得しているかどうかを調べる。

「各国政府はこれに注目する必要がある。誰がウイルスに接触し、誰がしていないかの情報が得られれば、流行についてもっと理解を深めることができる」とクレナーマン氏は指摘。「大勢が接触しているかもしれないし、少数しか接触していないかもしれない。ただ、検査を始めるまでは分からない」と述べた。

 マット・ハンコック(Matt Hancock)英保健・社会福祉相は24日、英政府が新型ウイルスの抗体検査キット350万人分を発注したと発表した。英国では25日午前の時点で8000人以上の感染が確認され、死者は422人に上っている。(c)AFP/Patrick GALEY