【3月26日 AFP】新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための手洗いは今や日常的な光景となったが、内戦で荒廃し清潔な水が非常に乏しいイエメンでは数百万人の人々にとって手が届かないぜいたくな行為だ。

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 イエメンの崩壊した医療体制の下で新型コロナウイルス感染者は今のところ確認されていない。だが、長年にわたる内戦で、国連(UN)が世界最悪の人道危機と呼ぶ状態に陥っているこの国にパンデミック(世界的な大流行)が及べば、その影響は計り知れない。

 イエメンでは、政府軍とイランの支援を受ける反政府武装組織フーシ(Huthi)派との間で戦闘が続いており、政府を支援するサウジアラビア主導の連合軍がイエメンに軍事介入してから5年がたつ。現在、人口3000万人の約80%が支援を必要としている。

 緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」は、多くのイエメン人は清潔な水やせっけんさえ手に入らないと懸念する。

 MSFがイエメン、イラク、ヨルダンで展開するプロジェクトの責任者、キャロリン・セガン(Caroline Seguin)氏はAFPに対し、「われわれは非常に心配している」「手洗いを彼らに推奨することはできるが、手を洗う手段が何もなかったらどうするのか?」と語った。

 国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)によると、子ども920万人を含む1800万人近くが、安全な水を安定して手に入れることができずにいる。水道水を利用できるのは人口のわずか3分の1ほどだ。

 同国では現在、健康医療センターの半数ほどしか機能しておらず、機能しているところでも医薬品や医療機器、人員の不足が深刻だ。

 医療がこのような状態の中、長年アラビア半島(Arabian Peninsula)の最貧国であるイエメンに新型ウイルスが到達すれば「大惨事」になり得ると、MSFは指摘する。

 赤十字国際委員会(ICRC)イエメン代表部は22日、「頻繁な手洗いは、コロナウイルス感染予防の最も効果的な方法だが、安全な水を手に入れることができないイエメン国民の半数以上はどうすればいいのか」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 映像は水をくむ子どもたち。2月27日、3月5日撮影。(c)AFP/Mohammed Al-Wafi with Shatha Yaish in Dubai