■選挙という時限爆弾

 コロナ問題の陰に隠れてしまってはいるものの、経済や政治の混乱も、トランプ氏にとっては大統領選に向けての時限爆弾だ。

 新型コロナウイルスによる集団感染のリスクについて保健当局は、今後の見通し──いつ収束するのか、そもそも収束するのか、夏以降も続くのか──は分からないとしている。

 一方、経済専門家の間でも、米経済の事実上の閉鎖状態の影響がいつまで続くのか、またその影響はどれほど深刻なのかということをめぐって意見の一致はみられない。

 確実なのは11月3日に大統領選が行われ、トランプ氏が民主党の大統領候補となると見込まれるジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領と戦うことになるということだけだ。

 新型コロナウイルスの流行とそれに続く一連の対策は、トランプ氏の選挙戦スローガン「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」を吹き飛ばし、歴史的株高と失業率の低さを誇っていたトランプ氏の成果さえも破壊した。

 こうした状況の中、保守派の間では、思い切った新型コロナウイルス対策が利益よりも損害をもたらすことになるタイミングを見定めようとする動きも見え始めている。

 その一方で、対人距離の確保と自主隔離を今よりも厳しくすべきだと警告する人もいる。米公衆衛生局のジェローム・アダムス(Jerome Adams)長官はその一人だ。

 同氏は23日、米CBSの番組で「好転する前に悪化するだろう。われわれはすべての人に事態が深刻であることを理解してもらう必要がある」と述べている。

 トランプ氏は、「大統領選」「パンデミックの阻止」「世界一の経済力の復活」といった課題がある中で、いまだにどの方向に進むべきかを見いだせてはいない。(c)AFP/Sebastian Smith