【3月25日 Xinhua News】中国河南省(Henan)洛陽市(Luoyang)の前漢時代の大型墓から出土した幾つかの円形玉璧や穴の開いた玉片、金糸などが、古代の神秘的な葬具「温明」と「玉温明」であることを、考古研究者がこのほど、実証した。このような地域特性が明らかな器物が中原地域(黄河の中下流域)で見つかったのは初めて。

 洛陽市文物考古研究院商周研究室の薛方(Xue Fang)主任は「前漢時代には死者の顔に玉覆面(顔隠しの仮面)や七竅塞(目耳鼻口をふさぐ玉器)を施し、頭の上に温明を置く葬送習慣があった。死者の頭部の周りに散らばっていた玉璧の位置や穴の開いた四角い玉片から『玉温明』ではないかと推測している」と説明した。

 温明は、長方形の洗いおけのような木製の箱を逆さにして死者の頭部にかぶせる構造になっており、片側の短辺の側面が開いていて、そこに胸部が収まるように置くことで頭部全体を覆うことができる。三方の側面の内側には玉壁がはめられ、かぶせた箱の底面の内側(死者の顔面の直上に当たる部分)には銅鏡がはめられている。玉片は温明の上にかける覆いで、布のようにひもでつなぎ合わせたものだと考えられる。 

 同研究院の副研究員で同墓発掘の現場責任者の潘付生(Pan Fusheng)氏によると、これらの玉璧は被葬者の頭部、さらに胸部と腹部に集中しており整然と並べられていた。発掘が進むと頭の位置から大量の金糸も見つかったという。

 潘氏は温明について、長江中下流域から淮河一帯(江蘇省、安徽省中部)や連雲港市(江蘇省)、青島市(山東省)などで多く発見されているが、漢代の墓で見つかるのは全国でも少ないと説明。特に玉温明の出土はめったになく、中原地域では今回が初めてだという。

 温明とは温かく明るいことを意味する。漢代は死後の世界を生前同様に重んじており、人々はこの世の光とぬくもりを死後の世界にも持ち込むことを望んでいた。そのため玉璧や銅鏡など当時光明を象徴するとされていた物を使って葬具を作り、死者の頭上に置いたのだという。

 潘氏は「温明はランクの高い葬具で、玉温明についてはさらに少なかったはず。墓の主人は生前、相当高い社会的地位と豊かな資産を持っていたのだろう」と語った。

 同墓の主墓室は、主ひつぎ部分を実験室に運び、現在も調査を続けている。前漢時代中・後期の上級貴族の生活習慣や埋葬習俗などの研究でより多くの実物資料が得られると期待されており、墓の主人の素性についてもさらなる裏付けが待たれる。(c)Xinhua News/AFPBB News