【3月22日 AFP】オランダはチューリップの季節を迎えたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大による需要の激減が要因で、花の生産者たちが毎日数百万本もの花を廃棄するという前例のない事態が発生している。

 チューリップやバラ、菊などの花の山々が、先週から処分を待っていた。ロマンチックな演出や母の日のプレゼントとして贈られるはずだった色鮮やかな花々は、掘削機にすくい上げられ、大きな廃棄物用コンテナに捨てられていく。

 世界最大の花き卸売市場、ロイヤルフローラホーランド(Royal FloraHolland)の広報担当者は、「廃棄が唯一の解決法」「こうせざるを得ないのは実のところ初めてだ。この市場は100年以上前からあるが、このような危機的状況も初めてだ」とAFPに語った。

 ロイヤルフローラホーランドによると、オランダの花の年間総生産量の70~80%が廃棄されているという。風車やチーズ、木ぐつと並んでチューリップが国のアイデンティティーの象徴の一つとなっているオランダにとっては大打撃だ。

 オランダ球根生産者協会(KAVB)幹部のプリスカ・クライン(Prisca Kleijn)氏によると、新型コロナウイルスの世界的流行による生花商の活動停止は、「劇的な」結果をもたらすことが予想されるという。

 クライン氏は「こうした状況はこれまで見たことがない」「新型コロナウイルスの危機が欧州全体に広がったことにより、花の需要はもはやない」とコメント。母の日を控えていることや、チューリップの収穫期は1月から4、5月までで今がまさに書き入れ時の真っただ中にあることから、チューリップの生産者にとって「一年で最悪のタイミング」で危機が発生したと説明した。

 新型コロナウイルスの流行により、消費者の間では生活必需品の備蓄意欲が高まっているようだ。KAVBは「トイレットペーパーではなく、花を買って」と花の消費を促すキャンペーンに乗り出しているという。(c)AFP