【3月21日 AFP】米国で、新型コロナウイルスの流行による深刻な影響が生じつつあることを把握していた共和党の上院議員2人が所有株式を大量に売却していたことが分かり、インサイダー情報に基づいた取引だとの批判を浴びている。

 問題の議員は、リチャード・バー(Richard Burr)氏とケリー・ロフラー(Kelly Loeffler)氏。いずれも、米株式市場が暴落する数週間前、ホワイトハウス(White House)が新型ウイルスの脅威を軽視する姿勢を示していたにもかかわらず、株式を売却していた。

 バー氏は上院情報特別委員会(Select Committee on Intelligence)委員長として大きな権限を持ち、ほぼ連日、各情報機関から米国への脅威についての情報共有を受けている。同氏は2月13日、最大170万ドル(約1億9000万円)相当の株式を売却していた。

 一方、新任議員で、米議会でも指折りの富豪であるロフラー氏は上院厚生教育労働年金委員会の委員を務め、夫はニューヨーク証券取引所(NYSE)の会長を務めている。公文書によると、同氏の投資管理者は1月末から2月14日の間に最大310万ドル(約3億4000万円)の株式を売却していた。

 バー氏は2月7日、FOXニュース(Fox News)に対し、米国民が恐れる必要はほぼないと表明。だが同月27日に開かれた献金者との非公開会合では、新型コロナウイルスは1918年に流行し数千万人が死亡したスペインかぜに匹敵する脅威になる可能性があると表明したとされる。

 独立政府監視機関「ワシントンの責任と倫理を求める市民(CREW)」は20日、両議員が米国民ではなく「自己の利益を優先した」疑いがあるとして、上院倫理委員会に調査を求める申し立てを行った。両議員に対しては辞任を求める声も出ているが、当人らは不適切な行為はなかったと主張している。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権に対しては、新型ウイルスの脅威を知っていながら一般市民には情報を隠し、感染拡大の抑制に向けた措置が遅れたとの批判が出ており、今回のインサイダー取引疑惑により風当たりがいっそう強まっている。

 米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の集計によると、米国での新型コロナウイルス感染者は1万4600人、死者は210人に増加している。(c)AFP/Paul HANDLEY