【3月21日 AFP】廃業を決めていたオーストラリア唯一の通信社AAPは19日、急きょ複数の買収提案を受けたとして、廃業の計画を中断することを明らかにした。

 先月廃業を発表したAAPの経営陣は同日、社員に宛てた電子メールで、複数の買収提案を検討する間、廃業の計画を一時中断すると説明。AAPのブルース・ダビッドソン(Bruce Davidson)最高経営責任者(CEO)はこのメールで、「経営陣も、AAPの取締役会や株主たちもこの展開を予想していなかった」と記している。

 同社は、秘密保持合意があるとして、買収提案者らの名前を明かさなかった。

 同社の主要株主であるメディア企業ナインエンターテインメント(Nine Entertainment)と、ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏所有の複合メディア企業ニューズ・コーポレーション(News Corp)は、AAPが「もはや存続可能ではない」と判断。これを受け先月、従業員約180人には廃業の旨が伝えられた。

 AAPを廃業するとの決定は、同国をはじめ各国のメディアに衝撃を与えた。そして、民主主義諸国の中で最もメディア業界が集中化した国の一つである同国で、独立系の報道機関が失われることに対する懸念が高まった。

 一部の従業員はすでに3月下旬まで解雇されるとの通達を受けていたが、6月までに会社を畳む計画は現在中断され、解雇は少なくとも2週間延期されるという。

 ダビッドソンCEOは「この展開によって、皆にとってより不確実さが生じたことは理解している。この困難な時期に、さらに複雑さが一段階増したことを謝罪する」とした。

 さらに「われわれ全員が慎重にならなければならない。協議の結果、なにも起こらないかもしれないし、関心を持っている当事者は報道機関を運営する資格がないかもしれない」と述べている。

 AAPは1935年、マードック氏の父であるキース・マードック(Keith Murdoch)氏によって設立され、同国関連のニュースにおいて、同国および海外主要メディアへの配信元として中心的な存在だった。(c)AFP