【3月20日 AFP】新型コロナウイルスの影響で全土が封鎖されているイタリアで、市民が読書に充てる時間は十分あるのに、開いている書店がないという状況が生まれている。個人書店は苦境に立たされている。

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 普段から好況とは言い難い書店業界は、インターネット通販大手の米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)の書籍宅配は認められているのに、自分たちはなぜ休業を強いられるのかと疑問の声を上げている。

 ベローナ(Verona)で書店を経営する、同国小売り書店協会のパオロ・アンブロジーニ(Paolo Ambrosini)会長は「オンライン書店は開店していて、配達員らは配達に出掛け、従業員らは梱包(こんぽう)作業をしている」「もし本が不要だというのなら、流通をすべて停止すべきだ」と話し、制度の不公平さを批判した。

 休業期間は来月3日までとされているが、延長される可能性もある。フィレンツェ(Florence)の書店経営者、ウンベルト・パネライ(Umberto Panerai)さんはこの措置は「壊滅的」で、自分の店は閉めなければならないのに、他の販売業者らには休業が免除されている政令の理論に疑義を呈した。

「新聞の売店やスーパーマーケットは本を販売している。香水の販売店だって開いている」とパネライさんは指摘している。

 新型ウイルスの感染拡大を受け、今月10日に出されたイタリア全土を封鎖する政令では、生活必需品ではないとみなされる食料品以外の商店の大半を閉鎖対象とした。ただ薬局、電子機器やペットフードの販売店、新聞の売店などはその対象から除外されている。

 伊出版社モンダドーリ(Mondadori)は、同社が全国に展開する約600軒の書店は休業しているものの、オンラインの売り上げが50%以上増加したため「部分的に相殺」されていると明かしている。

 ローマ中心部にある、フランス語書籍の老舗書店の経営を3年前に引き継いだマリーイブ・ベンチュリノ(Marie-Eve Venturino)さんは、個人書店の経営状況は「非常に不安定で、利益はゼロに等しい」と話した。

 政府が最初に提示した国民と事業所に対する援助には、大打撃を受けている書店業界に対する支援は一切含まれていなかった。

 ただベネチア(Venice)の北に位置する人口2万7000人のベルーノ(Belluno)の市長は16日、市内の書店5軒に、書籍の宅配販売を許可した。

 市長による例外措置を受けて、書店を経営するアレッサンドロ・タラントラ(Alessandro Tarantola)さんは、閉めた店内にこもって、電話で注文を受けては直ちに配達するサービスを行っている。配達時にはマスクと手袋を着用している。

 タラントラさんは「読書はなくてはならないもの。心と精神を開き、自分たちが今生きているこの世界とは別の世界に没頭させてくれる」と語った。

 タラントラさんによると、注文が多いのは新刊小説や教師が薦める児童書。リクエストが最も多い本の一つは、1947年に出版されたアルベール・カミュ(Albert Camus)の有名作「ペスト(The Plague)」だという。(c)AFP/Catherine MARCIANO