【3月20日 AFP】新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発を、世界中の製薬会社や研究所施設が急ピッチで進めている。異なる技術を利用して市場投入を目指す薬品をいくつか紹介する。

■ギリアド・サイエンシズ

開発企業:米製薬ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences
開発対象:治療薬
実用化時期:今年後半

 ギリアドの抗ウイルス薬「レムデシビル」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスに関連した薬剤としては市場への投入が最も近いと考えられている。実際には、レムデシビル自体は以前からある薬剤で、エボラウイルス(エボラには効果がないことが証明された)など新型コロナとは別のウイルスを念頭に開発されたものだが、まだどの疾患に対しても承認が得られていない。

 それでも医師らによると、レムデシビルは中国の新型コロナウイルス感染患者の一部に対する治療において、早期の有望性を示しているという。ギリアドは現在、アジア地域で最終段階の臨床試験(第3相として知られる)が進められている。また、米国でもこれまでに少なくとも1人の患者の治療に使用された。

 世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問のブルース・エイルワード(Bruce Aylward)氏は、中国で最近開かれた記者会見で「実質的な有効性を持つ可能性があると考えられる薬剤は現時点でひとつしかない。それはレムデシビルだ」と述べている。

■モデルナ

開発企業:米製薬モデルナ(Moderna
開発対象:ワクチン
実用化時期:12~18か月後

 中国の研究者らによって新型コロナウイルスのゲノム(全遺伝情報)が公開されてからほどなくして、新型コロナウイルスがヒト細胞に結合して感染する際に用いる部位「スパイクタンパク質」の再現モデルを米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のチームが作成した。チームは、極低温電子顕微鏡法を用いてこれの画像化にも成功している。

 そして、有害な影響を及ぼすことなく人体の免疫反応を引き起こす可能性があるこの再現モデルそのものが、ワクチン候補の基盤となった。これはワクチン開発のための古典的手法で、その始まりは1796年の天然痘ワクチンとされている。

 2010年に設立された比較的新しい企業であるモデルナはまた、米国立衛生研究所(NIH)とも協力してワクチン開発に取り組んでいる。このワクチンはメッセンジャーRNAを利用するもので、遺伝情報を用いてヒト筋肉組織内でスパイクタンパク質を生成させることから、体外で生成したタンパク質を接種する必要がない。

 テキサス大オースティン校のチームを率いたジェイソン・マクレラン(Jason McLellan)氏は、「迅速なプロセス」がこの手法の長所であると述べ、体外でタンパク質を生成する従来型のアプローチは調整が難しく、長い時間がかかると説明した。

 このRNAワクチンはマウス実験による有効性が確認された後、3月16日に初のヒト臨床試験が開始された。