【3月22日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて大混乱に陥っている航空業界の中で、一つの分野だけが活況を呈している。富裕層を得意客とするプライベートジェット業界だ。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により各国で入国禁止措置が取られ、旅行のキャンセルが相次いでいる。旅行調査会社「フォーワードキーズ(ForwardKeys)」は、大西洋横断便だけでも330万席ものキャンセルが出ると推定している。

 だが、米プライベートジェット運航会社「パラマウント・ビジネス・ジェッツ(Paramount Business Jets)」では、電子メールや電話が後を絶たない。「問い合わせが激増した」。AFPの取材に応じた同社のリチャード・ザヘル(Richard Zaher)最高経営責任者(CEO)によると、問い合わせ件数は4倍に、予約件数は20~25%増加したという。

 同氏によると常連客の利用頻度は通常と変わらないが、新規顧客が急増している。その大半はプライベートジェットを初めて利用する人々で、急を要している顧客か、あるいは民間航空会社の座席を確保できなかったり、リスクを冒したくないと思っていたりする人々だという。

 定員12席のチャーター便を利用する場合、英ロンドン発米ニューヨーク行きでは往復15万ドル(約1600万円)。香港発日本行きでは片道約7万1000ドル(約760万円)かかる。だが、英国から南仏までは1万ドル(約100万円)余りだ。

 民間航空会社の中国発着便の数は、この2か月間で約90%減少した。だが香港のチャーター便運航会社「エア・チャーター・サービス(Air Charter Service)」の広報担当者はAFPに対し、1~2月にかけて金融の中心地である上海、あるいは北京からの予約確定件数は70%増え、中でも新規顧客による予約は170%増と記録的な伸びだったと話した。

 同社のアジア・太平洋地域責任者のジェームス・ロイズジョーンズ(James Royds-Jones)氏は、「かなり裕福な客層だが、必ずしもチャーター便を利用する人々ではなく、1回限りかもしれない」と語った。

 同じく香港に拠点を置くチャーター便運航会社「メイ・ジェッツ(May Jets)」のダニエル・タン(Daniel Tang)氏は、新型ウイルスの流行が始まって以来、問い合わせは通常の5倍、予約は3倍に増えたと話した。

 顧客がチャーター便を選ぶ理由には、渡航歴が「不明な」何百人もの乗客と一緒に閉鎖された空間にいたくないという気持ちや、プライベートジェットの利用者は通常、混雑した主要空港ターミナルから離れた場所で税関手続きや入国審査を行えることなどがある。

「どちらもプライベートジェットを利用する際の通常の特典だが、この不安な時期にチャーター便を利用することは計り知れない利点となる」と同氏は語った。(c)AFP/Rose TROUP BUCHANAN