【3月19日 AFP】新型コロナウイルスの流行を受けて世界各地でトイレットペーパーやパスタのパニック買いが広がる中、外出や移動を厳しく制限する措置が17日に導入されたフランスでは、「主食」のバゲットが不足するのを恐れた人々がパン店に殺到している。

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 人口約6700万人のフランスで消費されるバゲットは年間90億本。首都パリでは毎年、「最優秀バゲット」を選ぶコンテストが開かれる。

 パン店は「必須サービス業」として、今回の厳格な外出制限下でも営業継続を認められた数少ない業種の一つだ。そして今フランスでは都市部から地方まで、どこの店にも大行列ができる繁盛ぶりとなっている。

「(外出制限が発表された)16日以降、売り上げは倍増した」と、パリ北部の大型スーパーマーケットに併設されたパン店の営業部長は18日、AFPに語った。「今は毎日800本のバゲットを焼いている」が、「昨日などは(スーパーの閉店時間より5時間早い)午後3時までに完売した」という。

「普段は1本か半分しか(バゲットを)買わない常連客が、今は4~5本買っていく。さらに厳格な隔離措置が発表されたときに備えて、冷凍しておくためにね」

 このパン店では新型ウイルスの感染対策として、客同士が安全とされる1メートルの距離を常に開けて並べるよう床に黒いテープで線を引いた。絶え間ない来店客から店員を守るため、売り場にはアクリルガラスの仕切りが新たに導入された。店員はマスクはしていないが、ゴム手袋を着用した上で、いつもなら使わないトングを用いてパンを扱っている。

■特別に週7日営業を許可

 仏労働省は17日、法律で週6日までと定められた労働時間上限を特別に緩和し、パン店に週7日営業を認めた。

 パン店経営者らでつくる業界団体「FEB」のマチュー・ラベー(Matthieu Labbe)氏は、労働時間上限の緩和について「国民が毎日ストレスなくパンが買えるようになる」と歓迎。「一度にバゲットを50本買おうとする人も現れている」と語った。

 一人当たりの購入数に制限を設けている店もあるものの、ラベー氏によればバゲット不足の心配はない。「小麦粉も酵母も塩もある。パンを焼くのに問題はない」

 なお、フランスでも世界各国と同様に、パスタの買いだめも起きている。

 仏トップのパスタ・ブランド、パンザニ(Panzani)の社長で仏パスタ製造業界団体の会長も務めるザビエル・リシェール(Xavier Riescher)氏は、「この3週間で売り上げは90%増加した。特に最近では100%以上の伸びを見せている」と話した。パンザニの工場は通常、週末は定休日だが、現在は週7日間、24時間操業しているという。(c)AFP/Mariëtte Le Roux and Joelle Garrus