【3月18日 AFP】オーストラリアのピーター・ドハーティー感染・免疫研究所(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity)は17日、新型コロナウイルスに対する人間の体の免疫反応が、インフルエンザ患者にみられる反応と非常に似ていると発表した。世界的に死者を出している新型ウイルスとの闘いにおいて突破口となる可能性がある。

【解説】新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの違い

 豪メルボルン大学(University of Melbourne)の同研究所は、症状が穏やかな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者1人の血液サンプルを検査。新型ウイルスに関して初めて全身の免疫反応をマッピングし、その結果を医学誌ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)に発表した。

 同研究所のキャサリン・ケンジェルスカ(Katherine Kedzierska)氏はAFPの取材に「臨床的回復に先駆け、非常に強固な免疫反応がみられた。患者は見た目にはまだ不調だったが、3日後に回復した」と述べた。

 ケンジェルスカ氏によると今回の発見は実践上、ワクチン開発と検査の二つに応用できるという。

 ワクチン接種の目標は、体の自然な免疫反応を再現することだ。研究チームは被験者となった患者が回復に至る過程で、血液中に4か所の免疫細胞の集合体を発見した。そうした免疫反応は「インフルエンザにみられるものと非常に似ている」とケンジェルスカ氏は語る。このことはワクチン開発の一助となる可能性がある。

 インフルエンザでは毎年数十万人が死亡しているが、有効なワクチンが存在している。

 また検査では、今後の流行の中でどういった人が最もリスクが高いかを、保健衛生当局がより正確に予見する一助になるという。こうした免疫系「マーカー」は理論上、非常に高い精度で、軽度の症状で済む患者と死に至る危険のある患者を見分けることができる可能性がある。

 新型コロナウイルス感染症によるこれまでの死者の大半は高齢者や、心疾患や糖尿病といった基礎疾患のある人々だ。一方、子どもは無症状か、症状があっても軽いとみられている。なぜこうした傾向があるのかについてはさらに研究が必要だが、免疫系は加齢に伴い自然に衰えるものだとケンジェルスカ氏は指摘している。(c)AFP/Patrick GALEY and Marlowe HOOD