【4月4日 AFP】ブラジルの一角にあるトタン屋根の小屋がごちゃごちゃと集まったみすぼらしい通り──一見、ファベーラ(Favela)と呼ばれる貧民街のようだが、よく見ると、市民庭園や雨水貯留システム、環境教育プログラムが導入されていることが分かる。この「スラム街」には緑があふれている。

 人口約1200万人のサンパウロ(Sao Paulo)郊外に位置し、およそ3000人が暮らしている貧困地区ビラ・ノバ・エスペランサ(「新しい希望の村」の意)では、住民たちが持続可能な生活の模範となる町づくりに奮闘し、同地区は環境プログラムを評価されてさまざまな賞を獲得している。

 この「緑のスラム街」の活動を推進しているのは、快活な女性、リア・デ・スーザ(Lia de Souza)さん(57)だ。10年前にこの地区で代表に選出された。スーザさんは、2003年に夫の虐待から逃れるためここに引っ越して来てからすぐ、このスラム街を故郷と呼べるような場所に生まれ変わらせる活動を始めた。目指しているのは、住民が環境と互いを尊重し、持続可能な生活を送り、共に地域社会の世話をするような場所だ。

「すてきな町とは言い難いこの場所を住みやすい場所にするために、みんなで一体とならなければなりません」と、自身が手掛けた有機栽培の庭園を案内しながら、スーザさんは言う。

 スーザさんが誇らしげに庭園のハーブコーナーを指さす。タイムにバジルにウコンにラベンダー、ミントも3種類。近くの赤土からはパパイヤとバナナの木が伸び、そばには紫色のブーゲンビレアとピンク色のアジサイが花を咲かせている。「薬用植物もたくさんあるんです」とスーザさんはAFPに対し、苗木でいっぱいの温室と堆肥を見せた。

 スーザさんは泥の塊を素手で拾い、ブリンケドテカ(brinquedoteca、「子どもたちの遊び場」の意)の壁に塗った。スーザさんらは、知育ゲームやおもちゃを備えた子ども向けの施設を設立しようとしている。