■恥知らずのイメージ

 思い出はバラ色だが、ゲンズブールには、恥知らずというイメージも付いて回った。

 当時12歳だった娘のシャルロットとデュエットした「レモン・インセスト(Lemon Incest)」が物議を醸したかと思えば、ゴールデンタイムのテレビ番組で米歌手の故ホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)を下品な言葉で口説いたこともあった。エロチックな歌「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ(Je t'aime ... moi non plus)」はローマ教皇庁(バチカン)から非難を受けた。

「今はあらゆることにポリティカル・コレクトネス(偏見や差別を含まない中立的な発言や行動)が求められる。彼なら相変わらず不道徳だったでしょうね。面白がって」

 一方でバーキンは、権力を持つ男性たちによる不正行為を告発する運動「#MeToo(私も)」については歓迎している。「若い女性たちにとって、こういう動きが起きて自分を苦しめる上の立場の人間に抵抗できるようになったのは喜ばしい」

 では、フランスの映画賞、セザール賞(Cesar Awards)で今年、ロマン・ポランスキー(Roman Polanski)氏が最優秀監督賞を受賞して論争が起きたことについてはどう思っているのだろうか。

 この質問にバーキンは、ノミネートされた以上、受賞することは間違ってはいないと話した。ポランスキー監督は1977年に起こした13歳の少女への法定強姦(ごうかん)により米国で訴追されており、同氏の受賞発表を受け、会場を退席する著名人や抗議する人々もいた。

「彼はノミネートされたのだから、その後どうするかは人それぞれ好みの問題。投票権があるので、票を入れたくなければ入れなければいい」とバーキンは言った。

「リンチは好きじゃない」

 だが、今世の中で起きている変化については改めて評価した。「私も感じずにはいられないけど、今の若い女性たちはノーと拒絶してもいいのだという実感を得ている」「他の人も応援するはず。それに、最近の若い男性たちも教育が行き届いていると思う」

「前と同じようにはならないはず。それはいいこと」 (c)AFP