【3月17日 CNS】「恨むことはしない。でも、どこかがおかしい。一つだけ聞きたいのは、あのホテルには問題があっただろうに、なぜ私らを泊まらせたのかということ。事故にあったみんながちゃんとした説明を聞きたがっている」。新型コロナウイルスの感染防止対策で隔離施設として使われていた中国・福建省(Fujian)泉州市(Quanzhou)の欣佳(Xinjia)ホテルが倒壊した事故の生存者である王昭さん(仮名、34)はこう語った。

 王さんは湖北省(Hubei)荆州(Jingzhou)出身。長年、泉州で家族と一緒に商売をしてきた。今年は、新年を故郷の湖北省で過ごし、泉州に戻って来たが、新型ウイルスの感染が深刻な地域から来た人を対象とする政府の要求で、集中隔離措置の対象となった。

 王さんは7日に発生した欣佳ホテルの倒壊事故の中で、最初に壊れた建物の中から逃げ出した。一緒にいた4人のうち、妻は助かったが、父親といとこは死亡した。

■「ホテルはどうして崩れたのか」

 7日午後7時過ぎ、ドーンという音がビルの下から伝わってくると、床が猛烈に揺れた。「地震だ!」。王さんは妻のところに行こうとしたが、2人とも大きく宙に投げ出され、粉じんが一瞬で口と鼻を覆った。体が投げ出されて数秒、王さんは窓の外からの光が壁を照らしているのを見た。2人は光のある方に向かってはって行った。

 この時、王さんはこれが地震ではないことが分かった。周りの建物は倒れていない。自分がいたこの建物だけが崩れたのだ。「われわれが宿泊していたホテルが崩れるなんて。どうしてだ?」

■「私は湖北の人間であることが間違いなのか?」

 夜が明けると、王さんの父親といとこは葬儀場に、妻は病院へ運ばれた。王さんは葬儀場に行きたかったが、医療関係者から「死んだ人が多いので、今行っても何もできない。葬儀は少したってから」と止められた。

「起こってしまったことは騒いでもしようがない。何といっても隔離された身分なのだから。皆さんも本音を言えば別の目線で私を見ている。でも、私が湖北の人であることが間違いなのか?」

 王さんはどうすべきか、頭の整理ができない。実家の母親に電話をかける勇気もない。「父親が亡くなったことなど、とても言えない」

■「恨むことはしない。ただちゃんとした説明が欲しい」

 荆州から泉州までは、車で12時間かかる。出発前に、泉州市から来た係員は王さんに「ホテルで14日間隔離となり、費用は自己負担で、1日1人200元(約3000円)だ」と話したという。4人で1万元超(約15万円)かかる計算だ。王さんは「健康証明もあるし、すでに40日も隔離されているのだから、泉州の自宅で隔離を受けたい」と言ったが、係員は首を縦に振らなかった。

 救命の限界といわれる72時間(3日3晩)、死亡あるいは生存のニュースが絶えず伝わってくる中で、王さんは一人で何回涙を流したことだろう。王さんは事故について「恨みはしない。でもどこかがおかしい。みんながちゃんとした説明を聞きたがっている」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News