■今までで最悪

 だが2018年半ば、アリさんはこれまでで最悪のけがをする。仕事の帰り道に地雷を踏んでしまい、両脚は吹き飛び、両目は見えなくなった。「あの日がこの世界を見た最後の日だった」

 今日、アリさんが体を引きずって車いすに乗り込むと、弟が押して家の外、太陽の下へ連れて行ってくれる。アリさんは膝の上に乗る少年をぎゅっとつかむ。

 停戦によって3月上旬から戦闘はやんだが、現在の状況は「今までで最悪」だとアリさんは語る。「避難民キャンプでは家もないし、必要最低限の物もない」

 戦闘が再開すれば、一家はまた動かなければならないだろうが、どこへという当てはない。

 だが、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領とその政権に抗議する蜂起の中で、2度も逮捕されたアリさんにとって一つだけはっきりしていることがある。

「たとえ腹を切り裂かれても、首をそぎ落とされても、頭を切り落とされても、自分と自分の子どもがアサド政権の下で生きることは受け入れない」

 2011年、反政府デモに対する残虐な弾圧とともに始まったシリア内戦では、これまでに39万人以上が死亡している。(c)AFP/Ahmad al-Atrash