ロータス・エキシージ・スポーツ410とは、どんなクルマ?

エリーゼをベースに車体をクーペ化し、トヨタ製3.5ℓV6を搭載した兄貴分がエキシージだが、そのラインナップの中でも公道向けながら最高出力を416㎰にまで引き上げたのがスポーツ410だ。クーペのほかソフト・トップを備えるロードスターも選択可能。変速機は6段MTのみ。カーボン製のパネルやウイングを採用しグラム単位での軽量化が図られている。0-100㎞/h加速は3.4秒、最高速は290㎞/hに達する。全長×全幅×全高=4080×1800×1130㎜。ホイールベース=2370㎜。車両重量=1110kg。車体価格=1424万5000円。

高平高輝の意見! 素足の爽快感

まるでフォーミュラ・カーのような丸く小さなステアリング・ホイールには今もパワーアシストは付かない。金属が触れ合う硬い感触が伝わって来るシフト・レバーも今ではかえって新鮮だ。エリーゼのデビューからそろそろ四半世紀にもなるが、水冷式インタークーラーを備えたスーパーチャージド3.5ℓV6を積む最新のエキシージ・スポーツでもその手触りはあの当時と変わらない。こんなストイックさは我々日本人の大好物である。実用性には乏しくても、あるいは経営的には危なっかしくても、いやだからこそライトウェイト・スポーツカーの教義に忠実なロータスを応援したいと思うファンは少なくない。

ポルシェをはじめ新型に変わるたびにより乗りやすく、扱いやすい方向を目指さざるを得ない中にあって、ロータスだけは今も特別。快適なクルーザーを志向したエヴォーラもあるとはいえ、アルミ・フレームにエンジンをミドシップ、ボディ・パネルはFRP製という軽量最優先の基本は一貫している。裸足で走るような爽快感はロータスだけの特長だ。

今尾直樹の意見! メチャクチャ楽しい

いまどきクラッチはキリリと重く、ステアリングもヨッコラショと重い。しかして、走り出せば、メチャクチャ楽しい。乗り心地は硬いけれど、それがレーシング・カーを操っている感を盛り上げる。といって、西湘バイパスの目地段差でも跳ねまくるわけではない。快適性とちゃんと折り合いをつけている。そこがスゴい。トヨタ製3.5ℓV6にスーパチャージャーを加えたロータス独自チューンのエンジンは416㎰と41.8kgmを発生する。車名の由来のぶ厚いトルクを6段MTでもって引き出し、1110㎏と依然絶対的には軽くてちっちゃなボディを山道で走らせるときの痛快さときたら、パンツを履いたままでできる、一番オモシロイことであるに違いない。

前後重量配分は34:66とRR並みにリア・ヘビーで、トラクションに優れる一方、前215/45ZR17、後ろ285/35ZR18というぶっといリアのミシュラン・カップ2がドシっと安定している感もある。アクセルを踏むほどに、背後からスーパーチャージャーのギア・ノイズが泣き叫ぶ。サーキットの狼が呼ぶ声だ。

斎藤聡の意見! 非日常を日常にする

乗るたびに痺れるような快感と興奮に身を包まれる。サスペンションのジョイントはピロボールで、ブッシュを介さないダイレクトな操縦性を持っている。ノンアシストのステアリングは、路面の様子とグリップしているフロント・タイヤの様子をダイレクトに伝え、ステアリングの微細な動きをクルマの動きに正確に反映する。パワーなどなくても、ヒリヒリするような操縦感覚に心拍数が上がってくる。

ところがエキシージ・スポーツ410はパワーユニットもベッピン。トヨタ製2GR-FE型3.5ℓユニット+ハロップ製のスーパーチャージャーを搭載。パワー&トルクは416㎰/41.8kgmを絞り出す。巧みな電子制御スロットルによって多少口当たりが良くなっているものの、それでもエンジンの鋭さにはむき出しの刀身のような危うさがある。アクセレレーターの微細な動きにエンジンが正確に反応してくれる。リア・タイヤのグリップの余力をすべて繊細なアクセレレーター・コントロールで引き出す。そんな非日常の一瞬を、このクルマは日常にしてしまうのだ。

九島辰也の意見! ただ"走り"のために

ロータスがどんなメーカーかはここでは省くが、いずれにせよエッジの効いたモデルをつくることは間違いない。極めてシンプルな内装のクルマにかなり高額なプライスタグを付けているのだから、その価値を知らない人が見たら驚くだろう。例えば今回ステアリングを握ったエキシージ・スポーツ410は1400万円オーバーの値札がつく。メルセデスでいえばSクラスを狙える金額だ。そう、高級レザー・シートに最先端のインターフェイス、最新の安全装備が付いたラグジュアリー・カーが手に入る価格帯である。

何が言いたいかといえば、エキシージ・スポーツ410のスゴさはまさにソコ。テーマとなるのは"走り"であり、それ以外の部分はすべて除外されるという徹底ぶりだ。まるで「テレビもねえ、ラジオもねえ……」って歌のようである。内装を簡素にすることはそのまま軽量化に直結する。結果、パワー・トゥ・ウェイト・レシオが上がることで、ロータスが目指す走りが具現化されるというわけだ。でもって、それがちゃんと売れる。どうです、やっぱロータスってスゴイでしょ!

森口将之の意見! 21世紀のおもてなしはナシ

いまどき416㎰はさして珍しくないが、車重はたった1110㎏しかない。なので21世紀のロードカーなら当然のように受けられるおもてなしは、エキシージ・スポーツ410にはない。パワステは付かずトランスミッションはマニュアル。クラッチは重く、リンケージがむき出しのシフト・レバーはストロークが最小限。走り出して最初に届くのは、フェンダーに小石が当たる音だ。

力は当然有り余っていて、4500rpmから上ではとてつもないサウンドを響かせる。レスポンスが鋭すぎて、最初はシフト・ダウンのタイミングが掴めないほど。走り出せばステアリングは軽いけれど、ただ切っただけでは思いどおりには曲がらない。それならと強めの制動の直後に舵を入れていくと、霧が晴れたようにスカッと向きを変え、立ち上がりで相応に踏めば硬めの脚がしっとり路面に接地し、豪快な加速を演じてくれる。スポーツカーは適当に運転するものではない、真剣に操縦してこそ歓びが得られる。そうロータスは教えてくれる。

(ENGINE2020年4月号)