【3月13日 AFP】一日の始まりは1杯のエスプレッソから──イタリア人の定番のライフスタイルが、新型コロナウイルスの流行で深刻な影響を受けている。

 首都ローマで働くビジネスマンのアレッサンドロさんにとって、街角のバルで毎朝飲むエスプレッソは「欠けてはならない」習慣だ。だが、政府が発表した新たな感染拡大防止策により、イタリア全土のバルは12日、一斉に閉店した。

 バルは地元の人々が仕事に行く前に立ち寄って、コーヒーや雑談で少しばかり気分を盛り上げる場所だ。毎朝必ずベネチア広場(Piazza Venezia)のバルに寄り、多いときには3杯もコーヒーを飲むアレッサンドロさんだが、この日は仕方なく自宅でコーヒーを飲んで出勤した。

「単純に言って、しんどいよ」とスーツ姿にマスクを着用したアレッサンドロさんは話す。「どこもかしこも閉まっていて、つらい」「いつも皆で冗談を言い合っては笑っているのに」

 通常は大勢の人でにぎわうベネチア広場周辺だが、バルやレストランなど「不要不急」な店舗は全て閉鎖された。人々が集まってモーニングコーヒーを楽しむというありふれた日常習慣さえも突然、緊急対策の対象となり、イタリア文化の核をなす社会性や家族性が制約を受けている状況だ。

「(新型)コロナウイルスは最悪だ。コーヒーさえ飲めないのか? 何てひどい世界になってしまったんだ」。年金生活を送る80代のロベルト・フィケラ(Roberto Fichera)さんは、観光名所コロッセオ(Colosseum)近くにある行きつけのバルが閉店しているのを見て嘆いた。「菓子パンとエスプレッソなしに、私の一日は始まらない」

 フィケラさんは、ジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相が11日に全国を対象に発令した店舗閉鎖措置を知らなかったという。

 イタリアでは12日、国内の感染者数が1万5000人を超え、死者数は1000人を突破。中国に次いで世界で2番目に新型ウイルスの影響が深刻化した国となっている。(c)AFP/Alexandria SAGE