【3月13日 People’s Daily】「羊を育てるなら、張子軍(Zhang Zijun)教授を探せ」これは中国・安徽省(Anhui)定遠県(Dingyuan)の牧羊農家が口をそろえて言うセリフだ。

 張子軍さんは、安徽農業大学動物科学技術院の教授。そしてもう一つ、地元の農村を支援する「安徽農業大学江淮分水嶺地区実験センター長」の肩書を持ち、大学から130キロ離れた定遠県に拠点を置き、農業振興に努めている。1970年代生まれの若い教授は地元の人々から「村民を貧困から救う親友、兄弟」と慕われている。

 定遠県は肉用羊を育てる農家が多いが、数年前から多くの課題に直面していた。張教授は2016年に調査チームを率い、県内の牧羊企業や大手農家を調査。品質の低下、生産施設の老朽化、飼料の利用率低下、疫病リスクの増加…。一連の問題に対する張教授の「処方箋」は独特だった。「生産、生育、加工、販売」を一体にとらえ、品種の選別・転換、羊舎の建設、さらに飼料を地元で育てる「栽培と育成の一体化」方式を導入。環境に優しい農業の普及で疫病リスクの低下も図った。

 効果は日ごとに表れた。子羊の出生率は2.1倍に増え、子羊の成育率も50%から95%に上昇。農家の収入は2000〜3000元(約3万〜4万5000円)増加した。

「問題のある一部分だけを注目してはいけない。全体の産業発展のカギを探し、照準を合わせることです」と張教授は語る。

 定遠県では稲作が主要産業だが、近年は停滞が続いていた。そこで張教授は稲作や水産養殖の専門家と協議し、水田で稲と食用ザリガニを同時飼育する方式を取り入れることを決めた。「まずはモデルをつくり、農家に見てもらおう」。張教授は大規模農家の協力で稲とザリガニ同時栽培を実施すると、1年目から一定の収入が得られた。そして同時栽培は全域に広がり、県の支柱産業に。ザリガニ養殖面積は約1.5万ヘクタール、年間生産量は3.3万トンに達した。稲作とザリガニを合わせた生産量は11万トンで、年間の経済効果は18億元(約270億円)に及ぶ。

 江淮分水嶺地区実験センターはさらに農業振興モデルプロジェクトを実施しており、農地に376の新品種を導入し、92種類の新技術を取り入れている。100戸以上の農家と共に6000ヘクタール以上の農地でプロジェクトを進めている。

 張教授は「私たちは大学と農村の懸け橋となりたい。私たちの研究成果により、農民が貧困を脱して豊かになる手助けとなれば」と話している。(c)People's Daily/AFPBB News