【3月12日 AFP】スペインの首都マドリードでは、新型コロナウイルスの流行を受けて休校措置が取られたため、ラモン・ミリャン(Ramon Millan)さん(74)は、自らが感染する危険を冒しながら、孫を世話するために毎日地下鉄でマドリードを横断している。

 スペインの感染者がわずか48時間で3倍に増えたことを受けて、首都があるマドリード(Madrid)州は11日から約2週間、保育園から大学まで一斉休校とする措置を取った。150万人の児童や生徒、学生が影響を受けるとされる。

 マドリード州ではこれまでに1000人超が感染し、31人が死亡している。その大半は高齢者だ。

 時として労働時間が長くなり、国が支援する学童保育もないスペインは、家族の絆が強く、祖父母が孫の世話に深く関わることが多い。このため一斉休校によって、新たな憂慮すべき問題が生じている。

 ミリャンさんは、マドリードのレティーロ公園(Retiro Park)で孫のイサン君(4)と遊びながら、「いつまでも、できる限り(娘を)助けていきたい」とAFPに語った。

 さらに、「妻は、私が孫を外に連れ出したと怒っている。孫と一緒に家に閉じこもっていろと言うんだ」「新型ウイルスは怖くないけど、妻は怖い」と述べた。

 中国で流行が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高齢者が最も影響を受けやすいとされる。

 マドリードの保健当局は先週、集団感染が発生したことを受けて、通所リハビリテーション(デイケア)施設を閉鎖した。保健当局トップは、高齢者が子どもと一緒にいるのは賢明ではないとの考えをにじませ、11日には、子どもはほとんど症状がなくても新型ウイルスを「社会にまき散らしている」と発言した。

 スペインで圧倒的な人気のメッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」には、「マドリードの数百万人の祖父母が電話がつながらないようにした」 「コロナウイルスより一斉休校の発表の方が多くの祖父母を殺した」などといったブラックジョークがあふれた。

 2018年の調査によると、スペインで学校への送り迎えや食事の世話といった孫の世話を毎日している祖父母は約25%、週に数日しているのは約40%だった。こういった祖父母たちが一斉休校で最前線に押しやられている。

 公園のベンチで孫のホルヘ君に本を読み聞かせていたエミリオ・サルバドール(Emilio Salvador)さん(67)は、「家族は子ども、とりわけ孫の世話をしなければならないのに」と嘆いた。

 今後2週間ホルヘ君の世話をするサルバドールさんは、「(在宅勤務が)できる人はごくわずかだ。(一斉休校で)状況に対応しようとしているが、問題を市民に押しつけたにすぎない」と語った。(c)AFP/Emmanuelle MICHEL