2020.03.18

CARS

【試乗記】プジョー508 SW GTブルーHDiに小沢コージらが試乗! 「いろんな意味で家庭に優しい」

プジョー508 SW GTブルーHDiとは、どんなクルマ?

クーペのようなスタイリッシュな5ドア・ハッチバックへと大変身を遂げたプジョーのコンパクト・モデル。そのワゴン版であるSWも5ドアに勝るとも劣らぬほど秀逸なデザインを持つ。プラットフォームはプジョー308と同じEMP2を用いているが、可変ダンパーを追加することで高い操縦性だけでなく、優れた乗り心地も手中に収めた。GTはシリーズのトップ・グレードで、177ps/40.8kgmの2.0ℓ直4ディーゼル・ターボを搭載。このほかのグレードには180ps/25.5kgmの1.6ℓ直4ターボが用意される。全長×全幅×全高=4790×1860×1420㎜、ホイールベース=2800㎜。5ドア・ハッチバックと比べると全長だけが40㎜長い。車両重量は1590㎏。価格は526.6万円。


小沢コージの意見! いろんな意味で家庭に優しい

プジョーが満を持してリリースした現フラッグシップのワゴン・タイプ。ボディ・サイズはデカく成り過ぎたメルセデスのEとCの中間と賢い戦略で、デザインはかつてのアリクイ調のマヌケづらではなく、イマ風の睨み顔にアップデート。イメージの薄かったハイテク面も万全で、アクティブ・セーフティ・ブレーキや追従オートクルーズ、レーンキープ・アシスト、ナイトビジョンやフル・パークアシストまで装着可。パワートレインもドイツ勢に負けじとトルク感と低燃費を両立したディーゼルを用意。


だが秘かにいいのは最新のプジョー車共通の新ドライビング・テイストだ。ステアリングは径が極端に小さく、ギア比も速く、手首程度のアクションで小気味良く曲がることができ、アクセレレーターも軽く踏んだだけでトルク感たっぷり。それでいて乗り心地はドイツ勢と微妙に違う癒し感あるもの。ついでにビックリは、ほどよい価格でセーフティ機能を標準装備してガソリン版なら500万円切り。いろんな意味で家庭に優しいデカめなプジョー。


藤原よしおの意見! 滋味深い味わい

最近、顔を合わせる業界の皆様が一様に「良い、良い!」と太鼓判を押すクルマの筆頭株。なかなか乗るチャンスがなく、実は今回が初顔合わせ。個人的に小径&変形ステアリングは苦手中の苦手なんだけど、レブ・カウンターが素敵なボビン・メーターなので許す。走れば2.0ℓディーゼルと8段ATのハーモニーが麗しく、加速の伸びもスムーズで音も静か。自慢のアクティブ・サスの調律も見事で、4つのタイヤがしっとりと路面に追従している様子がよくわかる。


4つ用意されている走行モードは、どこでも"ノーマル"で十分なほど。「あれ? そういえば変形ステアリングも全然違和感ないわ」ってくらいに、すぐに体に馴染むし、適度な柔らかさのシートも腰回りのサポートが絶品でずっと乗っていたくなる。フランス車臭ムンムンの超個性的な存在ではないけれど、元来プジョーは実直でケレン味のないクルマなので、これで正解。往年の名車504を彷彿とさせる滋味深い味わい。良いわ、これ。勝手ながら2020年の国民的ステーションワゴンに認定させていただきます。


桂 伸一の意見! 単なる荷物運搬車じゃない

プジョーが造るからには508SW・GTが荷物を運ぶためだけのステーションワゴンじゃないことは明白で、実際、操作に対する応答性の早さと、ハンドリングでは特に路面に対する追従性の高さが光る。高い速度域まで路面にヒターッと張り付き、凹凸を舐めるネコ脚の動きだが、じつはこれアクティブ・サスの威力である。ソフトなサスは高速道路での継ぎ目をタイヤの撓みも加えて滑らかにいなし、車体のロールやピッチングも抑え込んで安定性を保つ。


エンジンは2.0ℓブルーHDiディーゼル+8段AT。最初トルクが乏しいなと思ったが、ペダル・ストロークが長いため、微少の踏み込みからジワリ加速が効くプジョーのオトナの操作系の仕業だった。走行モードをスポーツにした途端、踏み始めから唐突にエンジン回転を速め加速する現代的な特性を示す。508SW・GTはエコやコンフォートといった走行モードに応じて自在に特性を変化させるネコのような変幻性の持ち主で、ワゴンの機能を有しながらスポーツカーにも成りうるハンドリング・カーだった。


佐藤久実の意見! ブレない癒し系

このガイシャ、「まったくブレない癒し系の走り」がスゴイ! 厳密に言えば、そして長い目で見れば、プジョーが彷徨っていた時代もある。が、今回508に乗って、今やまったくブレず、自信と確信でこの癒し系のネコ足を極めた感がスゴかった。室内に乗り込むと、ブラックで統一されたインテリアが広がる。奇を衒ったところもなく、落ち着いた雰囲気。でも、マテリアルの違いによってブラックだけでも陰影ができるとか、さすがフランス車と思わせるオシャレな空間を作り上げている。居住空間もラゲージも広さは十分。


そしてネコ足と絶妙なコンビネーションを見せるのが、2.0ℓのディーゼル・ターボ・エンジン。PHEVや電気自動車などの登場で、ディーゼルの存在感がちょっと薄くなっている感もあるけど、プジョーのディーゼルの歴史は長く、力強く滑らかで静か、そして粘りのある動力性能は、ゆったりしたネコ足と見事にシンクロしている。独特の世界観に惹きこまれるとともに、SUVが流行りの昨今、508SWをドライブして、ワゴンの魅力を再認識。


岡崎五朗の意見! フランス車の入り口にも最適

空前のSUVブームのいま、いち早くSUVを購入したアーリー・アダプターには「次の一手」を探し始めている人も多いだろう。その最右翼となるのがスタイリッシュなステーションワゴンだと僕は見ている。SUV並みのユーティリティを備えているのはもちろんだが、SUVに負けないカッコよさがなければ彼らの食指は動かないと思うからだ。


そんな観点から眺めた場合、508SWには強い説得力がある。ボルボやメルセデスのような正統派ステーションワゴンも悪くないけど、よりエッジの効いた遊び心を感じるのは508SWだ。立体感のお化けのようなダッシュボードに代表されるインテリアの個性もすごい。そして乗れば2.0ℓ直4ディーゼルの静粛性に驚く。知らずに乗ったらディーゼルだと気付く人は少ないだろう。適度にスポーティさを残しつつプジョーらしい癒やされ感を残す脚や、抜群によくできたレーンキープ・アシストなど先進安全装備にも抜かりはない。ポストSUVとしてだけでなく、フランス車への入り口としても最適な一台だ。


(ENGINE2020年4月号)

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