【3月12日 AFP】英ロンドンの男性が、骨髄幹細胞移植によりエイズウイルス(HIV)感染から完治した2人目の患者となったとする論文が10日、医学誌ランセットHIV(The Lancet HIV)に掲載された。男性は従来型治療を中止してから2年半が経過後もHIVが検知されていないという。

 これまで「ロンドンの患者(London Patient)」とのみ知られていた男性は今週、身元を公表し、ベネズエラ出身のアダム・カスティエホ(Adam Castillejo)さん(40)であることが分かった。

 カスティエホさんについては昨年、血液中からHIVが検知されない状態が1年半にわたり続いていることがケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究チームによって発表され、大々的に報じられていた。

 論文の主執筆者、ラビンドラ・グプタ(Ravindra Gupta)氏は、新たな検査結果はこれよりも「さらに素晴らしく」、カスティエホさんの完治を示したものとみられると説明。AFPの取材に対し、「HIVが潜伏することの多い部位を多数検査した結果、活性ウイルスの有無についてはほぼすべて陰性だった」と述べた。

 カスティエホさんは2003年にHIV陽性の診断を受け、12年にエイズ発症を抑制する薬剤治療を開始。同年、血液がんの一種であるホジキンリンパ腫が進行していることが判明し、16年に骨髄移植を受けた。

 カスティエホさんはこの際、遺伝子変異によってHIVに耐性があるドナーから幹細胞移植を受けた。この遺伝子変異がある人の割合は欧州人で1%未満。

 世界ではHIVにより年間100万人近くが死亡している。初のHIV治癒例は「ベルリンの患者(Berlin Patient)」と呼ばれた米国人のティモシー・ブラウン(Timothy Brown)さんで、2011年に類似の治療を受けて完治した。

 ただ研究チームは、この治療法がHIV陽性者に広く適用できるものではないと注意を促している。(c)AFP/Patrick GALEY