【3月11日 AFP】中国の新型コロナウイルス対策をめぐり、最前線で働く女性医療従事者を軽視していると怒りの声が上がっている。女性スタッフは生理用品の入手に苦労し、サイズの合わない防護服に四苦八苦しながら、髪の毛をそり上げて職務に臨んでいる。一部では生理の時期を遅らせるため、女性スタッフにピルを与えているとの報告もあり、怒りをいっそうあおっている。

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 ウイルス流行の最前線で働く女性たちが、防護服を長持ちさせるためにトイレに行かないようにしているという訴えを知った上海在住のジャン・ジンジン(Jiang Jinjing)さん(24)は、女性医療スタッフらは生理のときにどうしているのかと心配になった。

 ジャンさんがこの疑問を中国版ツイッター(Twitter)「微博(ウェイボー、Weibo)」に投稿すると、数千件ものコメントが付いた。中には新型コロナウイルス流行の中心地、湖北(Hubei)省の匿名の女性たちからの差し迫った訴えもあった。「多くの女性医療従事者が、生理が大いに問題になっていると言ってきた」とジャンさん。

 ある女性は「防護服を着ている間は一日中、飲食さえできない。ましてや生理ナプキンの交換なんて」とジャンさんに明かしたという。

 ジャンさんが生理用品の寄付運動を立ち上げると賛同する個人や企業が現れ、長時間着用できる生理用ナプキンや生理用下着60万点以上を最前線の女性に送ろうということになった。だが一部の病院は、問題への「十分な認識がない」としてこの寄付を断ったという。

 匿名でAFPの取材に応じた湖北省十堰(Shiyan)市の女性看護師は、「上役は全員男性」だと話した。一方、中華全国婦女連合会(All-China Women's Federation)によると、省の幹部らは圧倒的に男性が多いが、最前線で働く看護師や医師の大多数を占めているのは女性だという。

 生理用品の寄付運動について、ジャンさんはインターネット上で絡まれもした。ある投稿者は、「人の命だって守れないのに、パンツの股あてのことまで気にしていられるものか」と書いてきた。

 上海のとある大学病院は、増援として湖北省に派遣するチームの79%を占める「女性戦士」らに敬意を表し、「女性メンバーが『人に言えない』特別な期間を先送りさせるために」ピル200瓶を寄付すると発表したところ、当局は女性から自らの身体管理の権利を奪っていると批判するウェイボーのユーザーらから激しく非難された。あるユーザーは「生理ナプキンを提供したくないから、あなた方はそんな申し出をしている!」と怒りをぶつけた。

 この大学病院は後に、女性メンバーは自発的にピルを服用していると釈明した。

 女性医療従事者らが頭をそり上げているところを撮影したプロパガンダ動画も炎上した。衛生水準の向上のためとみられるが、中には涙を流している女性もおり、彼女らは進んで髪をそったわけではないのではないかと多くの人が疑っている。

 メッセージアプリ「微信(WeChat、ウィーチャット)」には、「女性の体をプロパガンダの道具として使うな」と主張するブログが投稿され広くシェアされたが、後に「違法コンテンツ」として削除された。

 同様にサイズの大きすぎる防護服を着た女性労働者らを「かわいい」と評した国営中国中央テレビ(CCTV)の報道も、ソーシャルメディア上で怒りを買った。(c)AFP/Jing Xuan TENG