【3月11日 Xinhua News】ヒマラヤ東部と中国南西部に生息しているレッサーパンダは、別々の2種だとするゲノム解析の結果を、このほど中国科学院動物研究所の研究チームが米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)の最新オンライン版で発表し、絶滅の危機にひんしているレッサーパンダに対して、個別の保護対策を行うべきだとする論理的な根拠を提供している。

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 レッサーパンダはこれまで、中国の雲南省(Yunnan)を流れる川、怒江を地質境界にした2亜種に分類され、川の東側に生息する種はシセンレッサーパンダ、西側に生息する種はニシレッサーパンダ(ネパールレッサーパンダ)とされてきたが、この分類は長く論争の的になっていた。

 中国科学院動物研究所の研究チームは、69頭のレッサーパンダの全ゲノムを解析し、母親からしか遺伝しないミトコンドリアDNAを49頭で、Y染色体配列を49頭の雄で解析した。その結果、レッサーパンダは2種類の遺伝子クラスター(機能的にほぼ同一か近縁の遺伝子がゲノム上の連続した領域に集まっているグループ)に分けられ、この2種類のクラスターには明確に違う種であると分類できるだけの特徴があることが分かったとしている。

 研究チームは、2種を分ける境界線は別の川、雅魯蔵布江にすべきで、ニシレッサーパンダとシセンレッサーパンダの分岐は約22万年前に起こったと主張する。また、遺伝子分析によって、個体数のボトルネック効果(環境要因によって生物集団の個体数が激減して生き残った集団の遺伝的浮動が促進され、遺伝的多様性が低い集団ができること)がシセンレッサーパンダで2回、ニシレッサーパンダで3回起こっていることも分かったとしている。

 研究チームは、今回の研究は種の保存に重要な意味を持つと主張している。

 ニシレッサーパンダの方が有害な遺伝子変異を起こす可能性が高く、遺伝的多様性も低いため、病気や厳しい気候変動によって個体数が減少する危険性が高い。

 研究チームは、今後は、それぞれの種を対象にした個別の保護対策を取るべきだと指摘する。飼育されている2種を交配させると悪影響が出る可能性があるので、避けるべきだとしている。

 レッサーパンダは国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に指定されており、野生で生息している個体は1万頭に満たないと推測されている。(c)Xinhua News/AFPBB News