■「正義を求めて」

 クーデター未遂以降、クーデターやその他反政府派に関連があるとされる人々への弾圧の一環で、数万人が逮捕され、15万人近い公務員が解雇や停職処分となっている。

 野党国民民主主義党のオメル・ファルク・ゲルゲルリオル(Omer Faruk Gergerlioglu)国会議員によると、クーデターに関与したとして計355人の士官候補生が終身刑を受けた。だが「具体的な証拠」はなく、大半は上官に従っただけだという。

 チェティンカヤさんが息子の逮捕を知ったのは、クーデターの2日後だった。トルコの法制度が正義をもたらすだろうという当初の望みは、裁判の進行とともに薄れていった。

 チェティンカヤさんはAFPの取材に「控訴審が(判決を)支持したとき、私はこの国には正義がないと信じるに至り、街頭で正義を求め始めた」と語った。

 チェティンカヤさんは息子の無実を訴える。政府がクーデターの黒幕だと糾弾する在米イスラム指導者フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師につながりのあるような人間は、自分たちの家族には一人もいないと主張している。

 フルカンさんら士官候補生は、トルコ北西部ヤロバ(Yalova)県にある訓練所にいたときに、司令官からテロ攻撃が発生したのでイスタンブールに戻るよう指示を受けた。

 夜にイスタンブールに着いたが、町は混乱状態に陥っていた。街頭には戦車が出ていて、兵士らが公共の建物に突入していると報告を受けた。全体の状況を把握できないまま、士官候補生たちは街頭で国歌を斉唱した。後にこの行為が、クーデター支持の証拠だとして批判されるとは思いもしなかった。

■正義の行進

 息子が有罪判決を受けて以来チェティンカヤさんは2週間ごとに、バスで往復20時間かけてイスタンブール郊外のシリブリ(Silivri)刑務所まで息子に会いに行っている。

 刑務所への旅を何度か繰り返すうちに、息子の状況を訴えるためアンカラから刑務所まで「正義の行進」をしようと決心した。だが先月、チェティンカヤさんは歩き始める間もなく捕まり3日間拘束された。チェティンカヤさんは今、抗議活動をめぐる3件の訴訟に直面している。

 AFPが確認した裁判書類には、チェティンカヤさんは「武装テロ組織」のメンバーであると書かれていた。

 チェティンカヤさんは自宅で応じたインタビューで、以前はトルコに正義がないことを知らなかったので、過去にはエルドアン大統領に投票したことさえあったと語った。

「私は家事や子どもの世話で忙しい専業主婦だった。私たちはテレビで見たことを信じていた。今回の経験で私が学んだのは、メディアは現実を報道しないということだ」

「初めのころ息子に面会に行くと、私は泣き続けていた。涙をこらえられなかった。自殺まで考えた」とチェティンカヤさん。

 だが、諦めなかった。

「正しい人は何も恐れることはないと信じている。無実の子どもたちから勇気をもらった」 (c)AFP/Raziye Akkoc