■「元には戻らない」

 今年行われる東京オリンピック。日本政府は「復興五輪」と位置付けている。

 オリンピックを通じて福島を「安全」だと報道してくれることはありがたい、そう鈴木さんは話す。だが「復興五輪」については否定的だ。

「生活という部分ではもう復興している。でも元に戻すことが復興だとしたら、元には戻らない。そういう意味では、絶対に福島は復興しない。一生、歴史として残ってしまう」

 鈴木さんがかつてサーフショップを営んでいた右田浜は、現在かさ上げが進み風力発電機がいくつも稼働している。そこに住む人の姿はない。

 昨年夏、南相馬市は震災以来初めて北泉海岸を正式に海開きした。鈴木さんのホームビーチだ。

「海の水はしょっぱいって知らなかった子どもたちが、海の水はすごいしょっぱいんだと言いながら、キャーキャー言いながら遊んでいた。それを見ていて、すごく気持ちがよかった」

 鈴木さんは、福島の自然が好きだ。

「サーフィンという部分で自然が残っていて、こんなにいい場所はないし、人もいい人ばかりだし、(中略)すごく心地がいい。それがいいと感じてくれる人だけでもいいから来てもらって、分かち合いたい。それで十分だ」

 今月誕生日を迎えると、65歳になる。サーフィンをしない人生には二度としないと決めている。

「70歳になって(動きの速い)ショートボードに乗れなくなったら、ロングボードに転向しようかな、なんて思っている」

 そう言って、穏やかに笑った。(c)AFP/Harumi OZAWA