【3月15日 東方新報】新型コロナウイルスの影響で1月24日以降、中国の旅行業界は全面的な営業停止に入った。24日以前に海外に25万人いた中国団体ツアー客は、1か月後には90人までに減少。旅行会社のほとんどが旅行代金の全額返還に応じているが、営業再開のめどが立たない中で苦境に立たされ、中国政府としても救済策が急がれている。

 文化観光部市場管理局の劉克智(Liu Kezhi)局長は2月26日、新型ウイルス感染発生以降、同部が中央の感染拡大防止策指導チームの指示に従って包括的な調整を強化、具体的には2つの措置をとったと話した。

 そのうちの一つが、観光経営活動の全面的な統制だ。旅行会社、オンライン旅行企業の業務を全面的に停止した上で、すべての国内外の団体ツアー業務を停止、全国の観光景勝区の営業も停止した。

 こうした徹底した措置により、感染拡大は大きく抑制されたが、観光業は深刻なマイナス影響を受け、多くの旅行会社が経営困難に陥っている。

 文化観光部としては2月5日に、旅行会社に対して徴収していた旅行サービス品質保証金を一時的に返還するとした通知を出し、旅行業務経営許可証を取得している企業に対し、現在納めている保証金の8割を返金するとした。これにより、25日までに全国の旅行会社の9割を占める3万5200社が返金を受けたという。

 大手ネット旅行代理店の携程(シートリップ、Ctrip)によると、重大災害補償金としてすでに1億元(約15億円)を出していたが、さらに1億元を上乗せした2億元(約30億円)を準備。1月28日から2月29日までに予定されていたツアーの料金のうち、ビザ発給費など保険費用で賄えるものを除いたすべてのキャンセル費用は携程が負担したという。

 また、シートリップの呼びかけで、ヒルトン(Hilton)、シャングリラ(Shangri-La)、インターコンチネンタル(InterContinental)、マリオット(Marriott)などのパートナー企業の国際ホテル集団の傘下にある数万の国内外ホテルがキャンセル保障に応じたという。国内外エアライン各社も、できる範囲でチケットの無料変更、返金に応じており、関連企業が痛み分けする格好で対応。顧客に対しては、国内、香港、マカオ(Macau)、台湾の団体旅行、パッケージ旅行、ホテル代など全額返還された。

 中国の観光旅行全面停止の影響は、海外にも大きな影響を与えている。昨年の春節(旧正月、Lunar New Year)時に69万人の中国人旅行者が訪れた日本では、日本経済新聞(Nikkei)によれば、影響が長期化すれば国内総生産(GDP)にして0.45%程度減少するとの予想が出ている。1~3月にキャンセルとなった訪日団体ツアー客は40万人を超えるという。

 また、韓国―中国間の航空便は40%がキャンセルとなり、韓国のホテル、旅行、物流産業は大幅に縮小。タイの国家観光局も、新型肺炎がタイ観光分野に与える損失を約30億ドル(約3077億円)と推計している。このほか、カンボジア、マレーシアなど東南アジアの観光産業が軒並み影響を受けている。(c)東方新報/AFPBB News