【3月6日 AFP】米保健当局は5日、新型コロナウイルスの感染発生が疑われカリフォルニア州サンフランシスコ沖で待機中のクルーズ船「グランド・プリンセス(Grand Princess)」の乗客乗員に対し、検査を実施した。同船には乗客2383人と乗員1100人が乗っている。

 カリフォルニア州兵が5日朝、検査キットを空輸。同日正午時点で乗客は全員、各自の客室に隔離された。検査結果は6日朝に発表される見通しだ。

 ハワイ行きツアー中だったグランド・プリンセスでは、直前のメキシコ行きツアーに乗船していた男性(71)が新型ウイルス感染により死亡。現在もメキシコ行きツアーに参加していた乗客60人余りが乗船中で、複数がインフルエンザに似た症状を訴えたことから、予定を変更してサンフランシスコに帰港する途中で米当局により沖合で足止めされている。

 AFPの取材に携帯電話のテキストメッセージを通じて応じた乗客のキャロライン・ライト(Carolyn Wright)さん(63)は、船内にパニックは起きておらず、乗客乗員はこの事態に冷静に対処していると述べた。

 5日夜に船長から、今のところ新型ウイルス感染が確定した乗船者はいないとのアナウンスがあったという。

 ニューメキシコ州在住の写真家で友人とツアー参加中だったというライトさんは、「ニュースでこの船のことがセンセーショナルに伝えられているが、理解に苦しむ」「前のツアーで感染者が2人出ただけなのに、まるで乗船者全員が感染しているかのような反応だ」と述べた。

 ライトさんによると、乗客は客室にとどまるよう指示されている。「デッキで会った人は皆とても落ち着いていて、実際のところ全てをただ冷静に受け止めていた」とライトさんは話した。乗客は「ほとんどが60歳以上で、90代の人もいる。皆クルーズ慣れしている」という。

 保健当局によれば、グランド・プリンセスがいつ、どこに着岸できるのかは現時点では不明だ。

 サンフランシスコ市危機管理局のメアリー・エレン・キャロル(Mary Ellen Carroll)局長は記者会見で、グランド・プリンセス船内では15日間のツアー中に35人がインフルエンザに似た症状を訴えたが、多くは既に回復していると説明。現在行っている検査結果が出次第、米疾病対策センター(CDC)と州当局が着岸に最適な場所を決めると語った。(c)AFP/Jocelyne ZABLIT