1950年代半ばから1970年代までレースとチューニングの世界で活躍したアバルトの名を冠したフィアット500の高性能版がアバルト595だ。なかでも595コンペティツィオーネは最もホットなモデル。創業者であるカルロ・アバルトの魂を感じるエンジンは、1.4リッター直4ターボで最高出力180ps/5500rpm、最大トルク230Nm/2000rpmを発生する。全長×全幅×全高=3660×1625×1505㎜。ホイールベース=2300㎜。車両重量=1120㎏。5段MT(383万円)のほか、パドル・スイッチを備えた5段自動MT(400万円)も用意される。
サソリのエンブレムがついているだけでも心躍るのに、バケットシートと、センター・コンソールから突き出したマニュアルのシフト・レバーを見てしまうと、いやがうえにも血が騒ぐ。そんなアバルト595コンペティツィオーネは、眺めているだけでも楽しいクルマだが、その走りっぷりは期待以上。機能優先のシートは硬めの座り心地で、走り出すと乗り心地も明らかに硬い。
しかし、それと引き換えに手に入る機敏な動きと、クルマとの一体感。エンジンはラインナップ中、もっともハイチューンの180psを誇り、アクセレレーターを踏み込めば、乾いたエグゾースト・ノートとともに力強い加速が味わえる。さらにスポーツ・モードを起動すれば、ターボのブーストがアップし、エンジンのレスポンスはさらに鋭くなる。それでいて、そのハイパワーを持て余すことはなく、躊躇せず全開にできるのは快感以外のなにものでもない。まさに、走る楽しみを追求するために生まれてきたこのクルマ。一度乗ると、病みつきになること間違いなし!
アバルト595コンペティツィオーネに初めて乗りました。そして驚いた。以前695ビポストというドグミッション付きエアコン無しの“ほぼ”競技仕様に乗った時は、走り出す前からある程度のパフォーマンスをイメージしていたため、むしろ意外性という点で薄め。けれど今回乗ったクルマはインテリアからして「少し気合い入ったスポーツ・モデル」という雰囲気。あまり気負わず走り出すや「おおっ!」。速いです!
後でスペック見たら1120㎏のボディに180psのターボ・エンジンを搭載している。考えてみたら2018年にWRCドイツで乗ったR2クラスのラリーカーのスペックが1030㎏で180ps。アバルト595、ラリー車にスペア・タイヤとコ・ドラを乗せた時と同じくらいのパワー・トゥ・ウェイト・レシオになります。そりゃ速いワケだ。興味深いことにアクセル全開後の数秒間、オーバーブースト制御を掛けている。定常ブースト圧より10%くらい高く過給してやり加速感を出す。加えて使われているパーツが全てブランドだ。パーツ見てるだけでウキウキしてくる。
周囲のクルマがどんどん大きくなってきたこともあり、小ささがますます際立って見えるアバルト595。相変わらずオシャレで、でもちょっとスパイシーな存在感は色褪せることを知らない。このコンパクトなボディに対して、エンジンは最高出力が180psにまで高められているから、加速はまさに弾けるかのよう。レコルト・モンツァの乾いた響きも心地よく、元気に加速していく。何しろ車重は1120㎏しか無いから、痛快なのも当然だ。
それに合わせてタイヤは17インチに、孔開きブレーキ・ローターも大径とされている。サスペンションも相応に締め上げられていて、乗り心地は今どきのスポーツ・モデルでも珍しいくらいハードだ。しかも、サポート性はバツグンのシートもクッション性は皆無で、乗り味はまるでレーシング・カートのよう。その分、レスポンスはクイックだけれど……。まあ、毎日乗るのではなく週末スペシャルだと思えば、それもアリ。左右ハンドル、5段MTが選べるのも、そんな趣味人には嬉しいところに違いない。
この小さなボディにスポーツのテイストがぎっしり詰まっている。アバルト595のエンジンは1.4ℓ直のインタークーラー付きターボ。180ps、230Nmを誇り、車重は1120㎏しかない。軽量ゆえにその走りはとても軽快でリズミカル。今回の試乗車は5段MT仕様だったからアップ・シフト/ダウン・シフトがすごく楽しい。ドライビングそのものがちょっとしたエクササイズのようにボクを鍛えてくれる。バリバリのスポーツ・モデルかと思ったらサスペンションは意外にしなやかに動き、乗り心地を諦めることもなく長距離を走ってもそれほど苦にはならないだろう。アバルトはスポーツ・モデルのロード・ホールディングが何かをしっかりと分かっている感じ。
3660㎜の全長に対してホイールベースは2300㎜。このホイールベースゆえに直進性もコーナリングのピーキーさも外観からは想像できないほどにバランスしている。アバルト595は見た目だけじゃない、ドライブしても心を熱くさせてくれるところがスゴイ!
このクルマのスゴイところは、もう間違いなく1.4リッター直4ターボ・エンジン。スペックにすると、180ps/230Nm。ベースとなったフィアット500が、パワフルな方のツインエアでも85ps/145Nmですから、とんでもなくパワフルなんですよね。なんとリッターあたり129ps!です。でもそれだけ力強いにもかかわらず、もうやりすぎなくらいのスポーツ・スイッチON状態から、不思議と戻したくなくなっちゃうんですよ。「仕方ない、自制心を保つために一般道ではノーマル・モードに戻すか」、なんていうくらい、スポーツ・モードがピッタリなんですよね。
ボディサイズ、振動、サウンド、車両重量もたったの1120㎏というのが、身体の奥底からムクムクと沸き上がる何かを刺激して、レーシング・カーを彷彿とさせてくれる。ちなみにアバルト500の競技車両のR3車両でも1080㎏が規定ですから、この数字とんでもなく軽い値ですからね。小さくて軽くて……やっぱりENGINEがスゴイんだなぁ~。
(ENGINE2020年4月号)
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