【3月5日 AFP】新型コロナウイルス感染者が使う部屋やトイレが広く汚染されるというシンガポールの研究報告が4日、米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された。手などが直接触れるところや洗面台、便器の定期的な清掃の必要性を明確に示している。

【出典:WHO】新型コロナウイルス予防の正しい手の洗い方

 しかし、手などが直接触れる部分は1日2回、床は1日1回、一般的な消毒剤を使って清掃すれば新型コロナウイルスは死滅するという。このことは、きちんと行いさえすれば、現在行われている汚染除去方法で十分であることを示唆している。

 科学者の間では新型コロナウイルス感染症の伝染について、せきによる感染よりも、環境の汚染が重要な要因だと考えられているが、どの程度重要なのかは明らかになっていなかった。

 シンガポール国立感染症センター(NCID)と軍事技術の研究・開発会社DSOナショナル・ラボラトリーズ(DSO National Laboratories、旧国防科学研究所)は、1月下旬から2月上旬まで3人の新型コロナウイルス感染者が隔離されていたそれぞれの部屋で、隔離期間2週間のうち5日、サンプル採取を実施した。

 3部屋のうち1部屋は定期清掃を行う前に、残る2部屋は消毒作業の後にサンプルを採取した。

 清掃前にサンプルを採取した部屋の感染者の症状はせきだけで、3人の中で最も症状が軽かった。残る2人は中程度の症状でいずれもせきと発熱があり、一人は息切れ、もう一人は喀痰(かくたん)があった。

 清掃前にサンプルを採取した部屋は、サンプルを採取した15か所のうち、椅子、ベッドの柵、ガラス窓、床、照明のスイッチなど13か所が汚染されていた。トイレでサンプルを採取した5か所のうち3か所(シンク、ドアの取っ手、便器)も汚染されていたことが分かり、便器も伝染経路になり得ることが改めて示された。

 空気のサンプルは陰性だったが、排気口から綿棒で集めたサンプルは陽性だった。ウイルスを含む飛沫(ひまつ)が空気の流れで通風孔に運ばれてたまった可能性がある。

 消毒作業の後にサンプルを採取した2部屋に陽性になった箇所はなかった。

 報告は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルスの正式な名称)感染者の呼吸器飛沫や便を流すことによる周囲の著しい汚染は、汚染された環境が感染経路になり得ることを示唆しており、環境と手の衛生を厳守する必要性を裏付けるものだとしている。(c)AFP