【3月8日 AFP】パキスタンでバッタが大量発生し、国内の農業地帯では過去30年間近くで最悪の被害が出ている。特に農業の中心地で作物が壊滅的な打撃を受け、食料価格の急騰を招いている。

 国連(UN)は、アラビア半島(Arabian Peninsula)を昨年襲った豪雨とサイクロンが「前例のない」バッタの繁殖を促したと指摘している。このバッタの大群は、東アフリカからインドにかけて広がり農地に大きな被害をもたらした後、イランを通ってパキスタン南西部の砂漠地帯から同国へ侵入。パキスタン政府は深刻な被害を受けて全土に緊急事態を宣言し、国際社会に緊急援助を要請した。

 パキスタン南部シンド(Sindh)州では、換金作物である綿の壊滅的被害が懸念されている。州都カラチ(Karachi)付近では全体の半分の作物が被害を受けている。

 また北東部パンジャブ(Punjab)州の当局は、被害を受けた地区に殺虫剤を散布するなど「駆除対策を開始」したと明らかにした。有害な煙霧が広がる中、毎日村人らは1キロ当たり20パキスタン・ルピー(約13円)の報奨金のために農地でバッタの死骸を集めている。しかしこの作業は時間がかかる上、1か所の農地でバッタを駆除している間に、別の農地の作物が壊滅していることも多い。

 当局が使用する殺虫剤は食べる上で危険なため、バッタを駆除しても残った農作物も廃棄しなければならない。殺虫剤の散布の順を待つ間、苦肉の策として鍋をたたいて叫びながらバッタを追い出そうとする農家もある。

 ムハンマド・ハシム・ポパルザイ(Muhammad Hashim Popalzai)食料安全保障・研究相は、中国の専門家らによるチームが今回の危機を調査するためにパキスタンに到着したとAFPに明らかにした。中国はより迅速で効果的な害虫駆除方法として、殺虫剤の空中散布を申し出る可能性もあり、またパキスタンが中国から殺虫剤を輸入する可能性もある。

 パキスタンの農業は長い間干ばつや水源の縮小に直面してきた。経済は12年連続で高インフレ率にあえいでおり、過去1年間では砂糖の値段が2倍近く、小麦粉の値段は15%上昇した。

 パンジャブ州ピプリパハール(Pipli Pahar)村の農業従事者らの多くは、バッタの駆除対策を講じるには遅すぎると感じている。ラフィヤ・ビビ(Rafiya Bibi)さんは牛と一緒に小麦畑の隅に座り、周囲に殺虫剤がまかれるのを眺めていた。

 ビビさんは政府から4万5000パキスタン・ルピー(約3万円)を借り入れ、菜種、ヒマワリ、トウガラシ、タバコなどを購入したが、バッタの大群はすでにこれらの作物を台無しにしてしまった。収穫できなければ借金を返す方法はないという。(c)AFP/Kaneez Fatima