【3月5日 CNS】集中治療室(ICU)を出て、防護服、マスク、手袋を取り、全ての消毒が終わると、1980年代生まれの蒋斌(Jiang Bin)さんは一日の勤務が終わる。丸刈りの蒋さんの顔と手は防護用品を長時間身に着けていたためシワだらけだ。

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 蒋さんは中国・武漢市(Wuhan)第三医院普通外科の医師。同病院は2月15日に連夜の改造を経て、新型コロナウイルスの感染患者の診察を開始。普通外科の医療関係者は一人残らず治療に当たり、蒋さんは首義分院のICUを受け持つことになった。

 ICUの中の重篤患者は皆、特効薬がなかったため終末期へ向かっていった。蒋さんがこれまで携わってきた外科治療では、適切な時期に手術を行えば危機を脱することができた。「新型ウイルスの患者は、いったん重篤になると、最後の時まであまり時間がない。間髪を入れずに患者を救うことが、患者の家庭にとって希望となる。だから、背水の陣で、後には引けない」と蒋さんは言う。

「一番うれしいのは、患者の容体が好転した時。でも、容体は変わりやすいので、ひと時も気は抜けない」。ICU専任として多くの困難に直面してきた。精神的な落ち込みや自身が感染するかもしれないという恐れに耐えながら、密閉された環境の中で長時間、蒸し暑い防護服を着て働き続けることは肉体的にもつらいことだ。

 2月25日は蒋さんにとって忘れられない日だ。この日、気温が25度まで上がり、湿度は87%となった。隔離服2枚、防護服1枚を重ね着し、N95型マスクと外科用マスクを重ね連続5時間働いた時、抑え難いいら立ち、目まいと頭痛に襲われた。やむなく、30分早めに退出したが、全身が汗でびっしょりとなっていたという。

 武漢市第三医院では、交差感染を防ぐため、多くの女性看護師が髪の毛を短くし、男性は丸刈りとなった。毎日の勤務が終わると、顔と手は防護用品に長時間押され、シワだらけになる。蒋さんらは、そのシワを「闘いの跡」と呼び、誇りとしている。(c)CNS/JCM/AFPBB News