【3月29日 AFP】アグスさん(匿名)は中華鍋にちゅうちょなく木製のへらを入れ、コーヒーとマリフアナ(大麻)をうまく交ぜ合わせながらローストする。

 アグスさんが住むインドネシア・スマトラ(Sumatra)島のアチェ(Aceh)州は、同国で唯一シャリア(イスラム法)が施行されており、飲酒や人前でキスするだけで、むち打ちの刑を受けることがある。

 アグスさんは厳格なことで知られるこのアチェで、マリフアナを「ブレンド」したコーヒーを地元の住民や国内の業者に販売している。1キロ当たりの価格は100万ルピア(約6700円)だ。

 政府の統計によると、アチェにはシンガポールの7倍近くの面積のマリフアナ畑があり、国内最大の生産地の一つとなっている。

 かつてアチェでは、マリフアナはありふれていた。地元住民は裏庭でマリフアナを栽培し、販売していたが、1970年代に禁止された。

 イスラム教徒が多数を占めるインドネシアは、密売人には死刑が科されるなど、世界でも最も厳しい水準の麻薬取締法が導入されている。また政府は、メタンフェタミンの使用が急増しており、「緊急事態」の真っただ中にあると宣言している。

 だが、アチェの現状はカオスだ。

 警察はマリフアナの栽培農家と使用者を摘発し、没収したマリフアナを焼却処分にしている。昨年だけで100トン以上のマリフアナが没収された。

 しかしアチェの議員は議会で2月、マリフアナを合法化し医療用マリフアナの輸出を可能にするよう提案した。この議員はすぐに、所属する福祉正義党(PKS)から懲戒処分を受けた。また、インドネシアの麻薬取り締まり当局も、アチェのマリフアナ農家が畑を野菜や他の作物の栽培に切り替えるのを思いとどまらせるものになるとして、この提案を批判した。

 アグスさんは危険があることは承知だが、刑務所に入れられることを恐れてはいないと話す。

「どこにでもあるものを、どうやって禁止にするのか」「(マリフアナは)アチェの至るところにある。大規模な取り締まりをしても人目につかなくなるだけで、みんな使い続けるだろう」

 アグスさんの今の最大の懸念事項は、完璧なブレンドを作ることだ。コーヒーとマリフアナの割合を7対3にするといいと話す。「マリフアナを30%以上にしてしまうと、コーヒーの風味が失われる」

 アチェの特産品には、マリフアナともち米やパームシュガー、ココナツミルクを混ぜたお菓子もある。(c)AFP/Haeril HALIM