■憎悪に満ちたうそ

「われわれのコンテンツをシェアする読者は、真実など気にしない。彼らは1日に500件ものシェアをするが、その大半は憎悪に満ちたうそだ。われわれのストーリーをシェアすれば、(免責事項によって)説明責任が果たせる」

 読者らの行動についてブレア氏は、「200~300人のネット荒らし集団」となってウェブページを巡回し、シェアした先でコメントする人々に申し開きができるかどうかを確認しつつ、これらがあくまで風刺記事だと言って拡散しているのだと話す。

「彼らは、理論や道理といったものには全く反応しない。しかし、自分らの行動に対しての批判には反応する。(偽情報の)シェアへの批判だ」

 しかしブレア氏の手法を「無害」と考える人ばかりではない。

 米シンクタンク大西洋評議会(Atlantic Council)で、偽情報の追跡と発見を手掛けているデジタル科学捜査研究所(Digital Forensic Research Lab)のグラハム・ブルーキー(Graham Brookie)氏は、「こうした類のコンテンツは広まりやすく、人々が共有する事実の侵食する。事実の共有がなければ、皆で協力して集団的決定を下すことのできる社会の維持は難しくなる」と指摘している。

■ユーモアのセンス

 フェイクニュースの帝王となる以前は、住宅改修の仕事をしていたというブレア氏。政治ブロガーとして活動していた2016年に「America's Last Line of Defense(アメリカ最後の防衛線)」と題するサイトを立ち上げた。ブレア氏の他に2人が寄稿しているという同サイトと、そこから派生した複数のウェブサイトは昨年、2600万ページビューを記録している。広告収入もあるようだが、その金額については明らかにしなかった。

 ブレア氏らは、論争となりやすいコンテンツを制作してはいるが、それでも踏み込んではいけない領域はあると語る。それは、選挙の投票日が変わったというたぐいのものだ。

 また、自らの仕事に批判的なスタンスの人々に対しても一言あるようで、サイト内の「私たちについて」の項に辛辣(しんらつ)なメッセージが掲げられている。「ここの記事を真面目に捉え、他の人に事実としてシェアできるようなら、今すぐにここから出て行ってください。まずはユーモアのセンスと空気を読むすべを身に付ける必要があります」 (c)AFP/W.G. Dunlop