【3月3日 AFP】先週末のドイツ・ブンデスリーガでは、各地で侮辱的な横断幕によって試合の進行が妨げられたり、試合が中断したりする光景が見られ、ドイツサッカー界の各所で溝が深まっていることが浮き彫りになった。

 ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)対SCフライブルク(SC Freiburg)戦や、ウニオン・ベルリン(1. FC Union Berlin)対VfLボルフスブルク(VfL Wolfsburg)戦の会場では、侮辱的な横断幕を外さなければ試合を中止するというアナウンスが流れ、1899ホッフェンハイム(1899 Hoffenheim)対バイエルン・ミュンヘン(Bayern Munich)戦は、横断幕に抗議する両チームの選手が最後の約10分間、敵味方でパスを交換するという異様な光景のまま終了した。

 こうしたトラブルは、伝統あるクラブのファンと、投資家や個人実業家の金銭的な支援を得て成り上がったクラブのファンとの間の激しい対立の象徴と言える。

 中でもホッフェンハイムを後援するディートマー・ホップ(Dietmar Hopp)氏は、クラブはファンのものであることを求めるリーグの規則を迂回(うかい)し、チームに3億5000万ユーロ(約418億円)を投資して地方の一クラブを1部に引っ張り上げたという大きな批判を集めている。ここ数週間、いくつかのスタジアムで見られたホップ氏をやゆする横断幕には、照準マークの入ったホップ氏の顔や、非常に汚い罵倒の言葉が書かれていた。

 ホップ氏本人は、「こういう連中の相手をするつもりはない。ずっと前からひどい侮辱を受けてきたし、納得してもらおうともまったく思っていない」と話す一方で、選手が立ち上がったことには感謝し、「憎悪の種をまく」者に対しては、同様の姿勢で立ち向かうことが必要だと話した。

「誰に対するものであれ、侮辱は非難すべき行為だ。場所や形式は関係ない。人種差別や同性愛差別には厳しい罰を与えるべきだ」

 サポーターの怒りの矛先は、侮辱的な横断幕を掲示したドルトムントファンに対してホッフェンハイムとのアウェーゲーム入場を2年間禁止する処分を下したドイツサッカー連盟(DFB)にも向いている。

 ファンの多くは、処分は「連帯責任」を問うようなやり方だと反発しており、その意見を選手も支持している。ケルン(1. FC Cologne)で主将を務めるヨナス・ヘクトル(Jonas Hector)は先月29日の試合後、「90分を通して選手を後押しする2万人が、一部の人間のやったことの罰を受ける」のはなぜなのかと訴えた。

 クラブ関係者の中にも、試合を中断したり、プレーを放棄したりするやり方は間違いで、サポーターは反感を強めるだけだと考える人がいる。

 ボルフスブルク戦で、横断幕が原因で試合が10分以上も中断する経験をしたウニオン・ベルリンのマネジング・ディレクター、オリバー・ルーナート(Oliver Ruhnert)氏は、「これから毎試合、介入しなくてはならないような状況は避けたい。そういうことに対しては極めて否定的だ」と話している。

 ルーナート氏は、ホップ氏を標的にしたような横断幕を出すことは「ダメ」だが、DFBはもっと友好的な措置を取り、サポーターとの対話の場を設けることを優先すべきだと信じている。

「ファンには自身の主観に基づいて批判する権利がある。どんなときも、大切なのは相手との会話とコミュニケーションだ」 (c)AFP/Daniel WIGHTON