【3月3日 AFP】イタリアで作られた歴史あるピアノが3日、中東エルサレムで競売にかけられる。落札価格は100万ドル(約1億800万円)を超えるとみられている。あしらわれた木彫りの装飾と同様に、ピアノには子細な歴史がある。

 ピアノは221年の間、伊トリノ(Turin)からパリ、第2次世界大戦(World War II)中の北アフリカ、ニューヨーク、イスラエルのテルアビブへと移動した。

 ピアノを調べたイスラエルの調律師モシェ・ポラット(Moshe Porat)氏はAFPに対し、このピアノは「視覚に訴える傑作」だと語った。茶色のアップライトピアノは翼のない天使や動物、植物や楽器などの彫刻で装飾されている。

 競売会社ウィナーズ(Winner's)によると1799年、トリノを拠点に活躍したピアノ職人のセバスチャン・マルキージオ(Sebastian Marchisio)氏が製作を開始したが、途中で死去。子孫が1825年に完成させ、シエナ(Siena)に暮らすマルキージオ氏の孫娘レベッカさんに結婚祝いとして贈った。

 さらにデザインの変更が加えられたピアノは、1867年にはパリ万博に出展され、その後、後のイタリア国王ウンベルト1世(Umberto I)に寄贈された。

 正確な状況は不明だが、ピアノはその後、ナチス・ドイツ(Nazi)の手に渡った。1942年の第2次世界大戦の北アフリカ戦線におけるエルアラメイン(El Alamein)の戦いでドイツに勝利した英国が地雷探知機を使い、石こうで覆われたピアノを砂の中から発見した。

 その後、イスラエルの商人を経て、テルアビブのアブナー・カルミ(Avner Carmi)氏のピアノ工房に。カルミ氏はこの宝物を発見して「人生が変わった」と、ポラット氏は言う。

 カルミ氏は石こうを取り除き、ピアノの仕組みを修繕し、米国に持ち込んだ。ピアノはニューヨークのスタインウェイホール(Steinway Hall)に展示され、1950~60年代に録音に使用された。

 カルミ氏は妻のハンナさんとこのピアノについての共著「The Immortal Piano(不滅のピアノ)」を出版。ピアノは1996年、現在の所有者であるイスラエル・カイサリア(Caesarea)の実業家に売却された。(c)AFP