【2月29日 Xinhua News】新型コロナウイルスによる肺炎の流行で、主に中医学(中国の伝統医学)の技法であるきゅう療法に使われてきた「もぐさスティック」の注文が急増し、中国の薬草医薬品メーカーは生産を加速している。

 もぐさの原料であるヨモギは薫蒸消毒に利用できるほか、殺虫・殺菌などの効果もあり、中国では数千年前から使われてきた。

 河南省(Henan)南陽市(Nanyang)は中国でもヨモギの栽培と生産が盛んなところで、栽培面積は2万4千ヘクタール。自生と栽培を合わせた中国全体のヨモギ生産量の70%を占めている。

 南陽市の農家、李慧さん(44)は1カ月ほど前から、地元の薬草医薬品会社でもぐさスティックを梱包する仕事をしている。スティックを10本ずつ袋に詰め、この袋を1箱に106袋ずつ入れていく。李さんが働いている南陽華康艾制品有限公司の李延慶董事長は「当社は、病気の流行の中心となった武漢に、複数の薬局チェーンを通じて毎日8千箱以上のもぐさスティックを販売している」と言う。

 国家中医薬管理局のデータによると、中国では6万人以上の新型コロナウイルスの感染者の治療に中医学の薬や療法が利用されている。南陽市の防疫本部は、ヨモギ製品を防疫資材に指定し、各社に生産の迅速化を要請。南陽華康は1月26日からフル生産している。

 李董事長は「ヨモギ製品は市場で供給不足になっているが、われわれは以前と同じ価格で販売している。原材料費、人件費、輸送費はいずれも高騰しており、10%だった当社の利益率は3%に縮小した」と語った。南陽市のもぐさスティックメーカーは自発的に価格協定を結び、新型コロナウイルス感染症が流行している間は価格を安定させると約束したという。

 李董事長は、「病気が大流行しているときに、利益のため倫理上の原則を忘れてはならない」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News