【3月7日 AFP】ロシアの首都モスクワの住民は、裁判所や学校、ショッピングモールなどに大量に送られてくる偽爆破予告に当惑している。爆破予告を受けた場合、避難が義務付けられており、市民生活にも支障が出ている。だが、当局は容疑者を特定できていないようだ。

 偽爆破予告はロシア各地に送られているが、特に人口1600万人のモスクワに集中している。1日1000通届くこともあるという。

 ロシアのインタファクス通信(Interfax)が情報筋の話として伝えたところによると昨年11月以降、偽爆破予告によってモスクワ市内の建物から避難した人は160万人以上に上っている。だが、当局も政府によって管理されているテレビ局も、この話題について触れることはほぼない。

 ある地方政府機関で働く女性の娘が通う学校では昨年12月、「時には1日何度も」避難することがあったという。また、別のモスクワ市民の女性は、娘の学校は12月以降13回も避難したと語った。

■沈黙を守る政府

 偽の爆破予告は常に暗号化されたプロバイダーから、組織や企業に大量に電子メールで送られる。

 情報筋がインタファクス通信に語ったところによると、2月5日には1500か所に爆破予告が送られた。この中には、救世主ハリストス大聖堂(Christ the Saviour Cathedral)、約30の裁判所、150の教育機関、232の地下鉄の駅、約10の病院、75のプール、約50のショッピングセンターが含まれていた。

 だが、当局がこの件に触れることはほぼない。

 旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の後継機関である連邦保安局(FSB)とロシア連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁(ロスコムナゾール、Roskomnadzor)は1月末、偽の脅迫状を送るのに使われた海外の暗号化された電子メールプロバイダー2社をブロックしたと、そっけない調子で明らかにした。

 人々の生活に大きな支障が出ているにもかかわらず、容疑者の名前や手掛かり、動機には触れなかったため、市民の不安は拭い去られていない。

 一方、政府の管理下にあるテレビ局は偽の爆破予告問題をほぼ無視しており、専門家らは、当局は行き詰まっているのではないかと指摘する。

 独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)で軍事関連の記事を執筆している元KGBのバレリー・シルヤエフ(Valery Shiryayev)氏はAFPに対し、「この出来事は、ロシアという国家が完全に無力だということを示している」と話す。

「この件が国営テレビで議論されたら、人々は政府に対する信頼を失うだろう」 (c)AFP/Romain COLAS