■解雇手当を使って来た人も

 寒稽古では、英語を話す指導員が外国人の対応をする。だが、伝統的な点呼や日本語で行われる館長の新年のあいさつ、最年少の柔道家が指導する準備運動は、外国人だからといって免除されることはない。

 鮫島氏は言葉の壁はあるとしながらも、柔道は言葉を超えた純粋な身体活動だと強調する。

 AFPが取材に訪れた日は、オーストラリア、米国、ドイツ、フランス、英国、ブラジルなど各国出身者が寒稽古に励んでいた。今年は16か国から50人の外国人が参加していた。

 豪シドニーのニック・フォーブス(Nick Forbes)さん(29)は職を失った後、解雇手当を使って一生に一度の旅をする決心をした。「ずっと柔道の聖地に来たいと思っていた。ここからすべてが始まった」と語る。フォーブスさんは、出費を抑えるため講道館の大部屋に宿泊している。

 ブラジル・サンパウロ(Sao Paolo)出身の不動産開発業者サンドロ・エンドラー(Sandro Endler)さん(48)にとって、講道館は子どもの頃からの夢の最終地点だった。 

「7歳の時に柔道を始めたが、当時はインターネットもなく、日本に来ることは遠い夢物語だった。48歳になり、ついにその夢がかなった」「柔道をやったことがある人誰もが来たいと思う場所で、寒稽古は特別だ」 (c)AFP/Richard CARTER