【3月20日 AFP】英イングランド北東部、絵画のように美しい村ライトン(Ryton)の中心に、コミュニティーが所有するパブがある。競争が激しい業界で経営危機に陥り閉店したパブを、常連客らが団結して維持したものだ。パブは飲食だけではなく、ヨガや映画上映など、コミュニティーの憩いの場としても機能している。

 パブ「イェオールドクロス(Ye Olde Cross)」の歴史は、1800年代にまでさかのぼる。タイン川(Tyne River)を東に10キロほど下ったニューカッスル(Newcastle)やゲーツヘッド(Gateshead)は当時、工業化と都市化の真っただ中にあった。すすけた都会を逃れた富裕層が移り住んできたライトンは、小さな町として成長を遂げた。

 パブは、すぐに地元の人々の生活に定着した。

 しかし2年前、スーパーやオンライン小売り大手との競争から、パブは閉店せざるを得なくなった。ある常連客は、 地元住民7500人に「イェオールドクロス・ロス」をもたらしたと語った。

 その後、多くの客が資金を出し合い、パブをコミュニティーで所有することにした。

「パブの建物を買うのに十分な資金は集められたが、それが精いっぱいだった」と、パブの運営委員会の管理者12人の一人、テッド・ユアース(Ted Euers)さんは語る。

 フランスにおけるカフェのように、パブは何世紀にもわたって、英国の暮らしの特色となっている。

 しかしここ13年間で、英国全体で約1万2000ものパブが閉店。英国統計局(ONS)によると、英国のパブのおよそ4分の1に当たる。

 一方で、回復の兆しもある。ONSは1月、従業員10人未満の小さなパブやバーの数は昨年、15年ぶりに増加したと明らかにした。