【2月28日 AFP】拡声器から鳴り響く衛生管理を呼び掛ける声、敷地内に閉じ込められた外交官、保健当局への「絶対的服従」を求める国営メディア――北朝鮮は新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の流行を防ぐため数々の対策を講じており、外交官からは「異例」との声も上がっている。

 中国で新型コロナウイルスが発生すると、独裁国家である北朝鮮は直ちに国境を封鎖し、外の世界との接触を断った。外交官やアナリストは、医療インフラが脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮にとって、これが自国を守るための最善の策だったと指摘する。

 北朝鮮は新たに入国した人を30日間隔離し、国内での対策も強化している。国営朝鮮中央通信(KCNA)によると政府は、戸別訪問による検診や、拡声器を取り付けた自動車で市民に衛生指導をするなど「反ウイルス運動」に力を入れている。

 さらに北朝鮮在住の外国人は全員2月初めから各自の敷地内にとどまらなければいけないことになっており、外国人にも厳しい制限が課されている。

 在北朝鮮ロシア大使館のアレクサンドル・マツェゴラ(Alexander Matsegora)大使は、平壌にいる外交官は市内に出ることができず、「精神的に厳しい」状況に置かれていると話す。

 同大使はロシア国営タス通信(TASS)に対し、「外交文書を受け取れず(中略)、応急手当てのための医薬品や物資も手に入れられない」と語った。外交業務は事実上、停止しており、北朝鮮当局者や諸外国の大使館との会合や対話、交渉なども行われていないという。

 現在の状況は「異常」だが、「国の重要問題」に対処するためこのような決定を下し実行できるのは、北朝鮮のような「独自」国家だけだと同大使は話す。

「もちろん物質的な面では、孤立は北朝鮮にとって非常に高くつく」が、いつでも喜んでそのような代償を払うだろうと指摘する。「国家の安全保障、イデオロギー、国の誇りが経済よりも、常に例外なく優先されるということを理解するのが重要だ」