【2月26日 AFP】メキシコ西部の町チェラン(Cheran)では、松の木に覆われていた丘陵が、違法伐採によって生態学的な不毛の地と化した。先住民プレペチャ(Purepecha)の人々は、銃で武装し土地を取り戻そうと決めた。

 違法伐採業者や背後にいる麻薬組織に住民らが戦いを挑んでから8年。山あいの無法地帯にあるこの町は事実上、先住民らの自治区となっている。

 住民らは居住区ごとの住民会議に基づいた独自の自治制度を敷き、独自の警察も組織している。そして、黒焦げになったむき出しの土地を青々とした松の木で再び埋め尽くすため、野心的な環境保護プログラムも実施している。

 この町が変わってしまったのは、自動小銃「AK47」で武装した麻薬組織「ラ・ファミリア・ミチョアカーナ(La Familia Michoacana)」のメンバーが現れてからだ。当時、メキシコ政府が全面的な「麻薬戦争」を開始したことで、麻薬組織は他の違法行為に手を広げようとしていた。

 彼らはわが物顔で違法伐採を行うようになり、闇市場で木材を売りさばくために広大な森林の樹木を切り倒した。「1日にトラック100~200台分の木を運んで行った。(当局は)何も言わなかった」と地元住民は話す。

 麻薬密売業者らは「松の木を全部切り倒してしまったら、次は女性を誘拐して家屋を奪う」と話していたという。

■武器を取った住民たち

 2011年4月15日の夜明け、チェランの教会の鐘が鳴った。住民らは武装し、先住民プレペチャの町に通じる道路を封鎖して検問所を設け、交差点ごとにかがり火をたいて夜通し見張りを立たせた。住民らの抵抗は麻薬組織との銃撃戦へと発展し、一連の衝突で住民2人が死亡。さらに土地の奪い合いをめぐって6人の住民が、違法伐採業者に殺害されたとみられる。

 だが、住民らは辛うじて町を奪還し、今はライフル銃で武装して森林を巡回している。また地元企業などが地域ぐるみで環境保護に取り組み、メキシコ国内で最先端のごみ再生事業を運営している。こうして違法伐採された土地1万2000ヘクタールの半分以上をこれまでに再生させた。

■ごみゼロへ

 リサイクルセンターには限られた安全装置やさび付いた堆肥化装置しかないが、ここで働く作業員らは、町の環境政策の柱である「ごみゼロ」の取り組みに関わっていることに「誇り」を感じているという。

 チェランでは、ごみを6種類に分別している。首都メキシコ市の倍の分け方だ。ごみはすべて再利用やリサイクル、堆肥化することを目標に掲げている。

 持続可能な発展を支援する団体「アビナ(AVINA)」の包括的リサイクル事業を率いるアナ・マルティネス(Ana Martinez)氏は「メキシコのどの地域よりもごみの分別が徹底されている」と述べた。

 映像は2019年10~12月撮影。(c)AFP/Jennifer GONZALEZ COVARRUBIAS